『フィフス・エレメント』のタクシー
『フィフス・エレメント』のタイトルを聞いて思う浮かべるのはなんだろうか。ガムテープのようなものを身体に巻きつけたミラ・ジョヴォビッチか、あるいは不思議なヘアスタイルのゲイリー・オールドマンか。ぼくの場合はブルース・ウィリスが運転する空飛ぶタクシーだ。未来都市を表現するのにあれほどぴったりなメカはないと思う。黄色い車体に白黒チェック柄というタクシーのトレードマークはそのままに、そのフォルムや印象を邪魔しないSF的アレンジが最高だ。『ブレードランナー』のスピナーと並ぶ未来の車と言えるだろう。
『フィフス・エレメント』は23世紀のニューヨークで、退役軍人のタクシー運転手コーベン・ダラスが、謎の女性を助けたことで宇宙的な宿命に巻き込まれる物語。タクシーに次いで印象に残るのはホバーカーが飛び交う中にあるマクドナルドの空中ドライブスルー。赤地に黄色の巨大な看板は、タクシーと同じように未来世界に生活感を与える。シャネルの自動化粧バイザーや空を飛ぶ屋台船なども好きだ。わかりやすい未来の世界観がキャッチーだと思う。
黄色い車体に白黒チェック柄というだけで、タクシーであるということと同時に地球の未来だということがわかる。たとえば『スター・ウォーズ』シリーズにもタクシーは登場するが、惑星コルサントの雲まで届く摩天楼を行き来するエア・タクシーは、地球の車とは全然違う形だし、タクシー的なカラーでもない。遠い昔の遥か彼方の銀河という、全くの異世界を描いているからこそだが、それだけで世界観を示せるほど、タクシーという乗り物は日常的な風景と深く結びついているのだ。