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悪者に対抗する文化・芸術という財産『ディリリとパリの時間旅行』ミッシェル・オスロ監督【Director’s Interview Vol.36】

悪者に対抗する文化・芸術という財産『ディリリとパリの時間旅行』ミッシェル・オスロ監督【Director’s Interview Vol.36】

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 『キリクと魔女』(98)や『アズールとアスマール』(06)など、知性やユーモアにあふれ、多様な価値観を描くアニメーション作品を作り続けてきた、フランスの巨匠ミッシェル・オスロ監督。新作『ディリリとパリの時間旅行』は、19世紀末のパリ、大勢の文化人でひしめいていた“ベル・エポック”の時代を舞台に、少女ディリリの冒険とおそるべき謎を描いた劇場アニメーションだ。またしても傑作を作り上げたオスロ監督に、独創的で知的なアニメーションを作るようになった理由や、新作の内容や製作事情について、直接じっくりと話を聞くことができた。


Index


独創的な作品の背景



Q:オスロ監督の作品はいつも素晴らしく独創的です。知的だということはもちろん、いつでも様々な文化や価値観を越境しています。そんな作風を作り上げたものは何だったのでしょう。


オスロ:まず、生い立ちの面では恵まれていたとは思いますね。比較的優れた文明のあるフランスで生まれて、両親とも教師でしたから、家には本がありました。だから子ども時代から世界に目を開かせてくれるような環境で育ってきたのです。


ローティーンの頃は、葛飾北斎に影響を受けました。北斎を通じて私自身、自然なかたちで“日本人になる”ことができました。その後すぐに、古代エジプトの文化に触れる機会があったんです。そのとき私はエジプト人になりましたし、ギリシャ文化を知ったときはギリシャ人になりました。でもローマ人になることはありませんでした。美しくなかったからです(笑)。でもルネッサンス文化は素晴らしかったですね。




他にもペルシャの小さな模型であるとか、19世紀末のイギリスのイラストレーターの作品であるとか、そういう様々なものが私のなかに組み込まれています。だからあらゆるものから影響を受けているわけで、私の作り出すものというのは、本当にはオリジナリティなんてものはないのかもしれないと、思うときもあります。


Q:世界の様々な文化が作品に登場する、非常に独創的な作品の背景が分かってきた気がします。それでは、アニメーションを作りたいと思ったきっかけは何だったのでしょう。


オスロ:ウォルト・ディズニーになりたいと思ったことは一度もないのですが、あの職業っていいよねとは、ずっと思っていたんです。だから子どもの頃からの自然な気持ちで、この素晴らしいアニメーションという仕事につくことができました。


子ども時代は、どちらかというと活発でオープンな方でしたし、“頭でっかち”でもあったので、何の仕事でもやりたいと周囲に言っていました。でも周りの大人たちは「そんなことを言っていても、いつか職業を一つに決めないといけない」と言うんです。でも私は、大人になってもどれか一つを選ぶということをしませんでした。




アニメーションを作るなかで自分で原画を描き、色も塗りますし、『ディリリとパリの時間旅行』ではそれをCGでモデリングしますし、歌いますし、ダンスもします(笑)。そして歴史を語るということをします。衣装も自分で選びます。


Q:何でも一人でできてしまうんですね。あらゆることをできる限り一人でやりたいという性格なんですね。


オスロ:そう!そして、それが実現できるというのが、私にとってのアニメーション製作という仕事なんです。



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