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『十三人の刺客』ジム・ジャームッシュも陶酔した!?集団抗争時代劇の系譜

『十三人の刺客』ジム・ジャームッシュも陶酔した!?集団抗争時代劇の系譜

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『十三人の刺客』あらすじ

江戸時代末期。将軍・家慶の弟で明石藩主・松平斉韶(なりつぐ)の暴君ぶりは目に余った。斉韶は近く、老中への就任も決まっている男。幕府の存亡に危機感を募らせる老中・土井利位は、かねてより良く知る御目付・島田新左衛門に斉韶暗殺の密命を下す。さっそく、甥の新六郎をはじめ十一人の腕に覚えある男たちを集めた新左衛門は、後に加わる山の民・木賀小弥太を含む総勢十三人の暗殺部隊を組織、入念な計画を練り上げていく。しかし、斉韶の腹心・鬼頭半兵衛もまたその動きを抜け目なく察知し、大切な殿を守り抜くべく周到な準備を進めていた…。


Index


時代劇の歴史を変えたエンドレスに続く壮絶バトル



 三池崇史版『十三人の刺客』は、クライマックスの50分に及ぶ壮絶な死闘が最大の見せ場だが、1963年のオリジナル版でもラストの決戦は30分に及んでいる。


 三池版では刺客13人に対して明石藩士が300人ととんでもない数に増えているが、オリジナル版では53人。しかしいくら斬っても終わることのない死闘を観ていると、絶対に53人以上いるとしか思えない。その点は1990年のテレビドラマ版も同様で、こちらは19分間と比較的短めではあるが、それでも観ている側がヘトヘトになるまで、刺客団と明石藩士は延々と戦い続けるのだ。


 1963年の『十三人の刺客』は、映画史的には「集団抗争時代劇」という新ジャンルを打ち立てた傑作というのが定説になっている。「集団抗争時代劇」では剣客が一対一の決闘を繰り広げるのではなく、それぞれに目的を持った集団と集団がぶつかり合う。いわば時代劇における団体戦だ。


 工藤栄一は『十三人の刺客』の後も『大殺陣』(1964)や『十一人の侍』(1967)など同趣向の時代劇を手がけている。また「集団抗争時代劇」のひとつに数えられる『十七人の忍者』(1963)や『忍者狩り』(1964)では、三池版『十三人の刺客』で他を圧倒した松方弘樹の実父・近衛十四郎のみごとな殺陣を観ることができる。


 「集団抗争時代劇」は時代劇からノスタルジーやヒロイズムを引き剥がす試みだった。実際、工藤栄一は『十三人の刺客』では細かく殺陣を付けず、役者同士ざっくばらんに斬り合わせた。ひたすら剣の道に打ち込んできた侍も集団に囲まれればなすすべがなく、また集団で一人を囲んでいても、斬られることにビビると手出しができない。


 華麗なチャンバラが売りの伝統的な時代劇と「集団抗争時代劇」の違いを、ロマンあふれるマフィア映画『ゴッドファーザー』(1972)とドライな暴力が炸裂する『グッドフェローズ』(1990)の違いになぞらえてみたいのだが、みなさんには同意していただけるだろうか?



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