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『ローガン・ラッキー』名曲「カントリー・ロード」が誕生した理由と、ソダーバーグ式犯罪映画術の意外な関係

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『ローガン・ラッキー』名曲「カントリー・ロード」が誕生した理由と、ソダーバーグ式犯罪映画術の意外な関係

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テキトーなイメージから生まれた“カントリー屈指の名曲”



 『ローガン・ラッキー』の冒頭では、チャニング・テイタム扮するジミーが幼い娘のセイディに「カントリー・ロード」の誕生秘話を語って聞かせている。おそらく30代であろうジミーがリアルタイムで聴いた曲ではないはずだが、ヒットソングが生まれた裏話をまるで伝説かおとぎ話のように娘に話しているのは、ジミーの生まれ育った故郷への愛情の証でもある。ウェストバージニアを「まるで天国(Almost Heaven)」と謳っていることから、2014年にはウェストバージニア州の(4番目の)州歌に認定されたほどなのだ。



『ローガン・ラッキー』© 2017 Incarcerated Industries Inc. All Rights Reserved.


 ところが、だ。劇中でジミー・ローガンも言及しているように、「カントリー・ロード」をヒットさせたジョン・デンバーはウェストバージニアに足を踏み入れたことがなかったのである。それだけでなく、ジミーが語る誕生秘話に登場する作詞作曲者のビル・ダノフもまたウェストバージニアとは縁もゆかりもない人物。映画では、ビル・ダノフと妻のタフィ・ナイバートがまだ作りかけだった「カントリー・ロード」をデンバーに提供し、一緒に曲を完成させた一夜のエピソードが紹介されているが、ここではさらに時間をさかのぼって誕生秘話に迫ってみたい。


 ビル・ダノフが「カントリー・ロード」の曲を思いついたのは、まだ結婚前だったタフィの実家を訪ねるドライブ旅行の最中だったという。曲がりくねった田舎道を走りながら、ダノフは「故郷へと連れて行ってくれる道」についての歌を思いつく。その時に走っていたのはウェストバージニアではまったくなく、首都ワシントンDCに近いメリーランド州だった。ただ、ダノフは四音節の地名がメロディーに合うという理由だけで「ウェストバージニア」を選び出した。ダノフが生まれ育った「マサチューセッツ」になる可能性もあったという。


 音楽ファンの間で語り草になっているのは、ダノフとデンバーがウェストバージニア州のことを知らないまま歌詞を仕上げたこと。歌い出しは「ウェストバージニアはまるで天国、ブルーリッジ山脈にシェナンドー川」なのだが、ブルーリッジ山脈はウェストバージニア州にはないし、シェナンドー川も州の端っこをかすめるように流れているだけ。日本で例えるなら、東京都の歌なのに箱根の山と芦ノ湖を讃えていたり、京都市が琵琶湖と淀川について歌っているようなもの。ずいぶん杜撰な作詞だと言わざるを得ない。


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