自分の権利を主張しないジェシカの強さとは
2017年のアメリカ映画は、長年、ハリウッドに君臨していたプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインへのセクシャルハラスメントを告発する流れによって、社会的な動きへと発展。次々と女優たちが「私も被害にあった」と勇気ある告発をSNSでするに至った、“me too”ムーブメントへとつながった。この時、色んな女優が様々な意見をSNSを通して積極的にアナウンスしたが、中でもジェシカ・チャステインのコメントはひときわ強く、そしてハラスメントを強いるものに対して厳しく言及するものとなっていて、度々マスコミの中で引用され、流布するに至った。
彼女の強さは、自分の権利を主張するのではなく、他の女優が窮地に立たされるような状況に陥ったとき、すかさず、その女優に対しての敬意と愛情に満ちた応援コメントを発表することにある。例えば、2018年2月、ユマ・サーマンが『 キル・ビル』の撮影中、クエンティン・タランティーノ監督の指示によって、自信のないスタントを強いられた結果、脳震とうを起こし、同時に背中と膝に怪我を負う事故に至ったことを発表した際、ユマを擁護し、クエンティンに対して厳しい批判の声を挙げている。
また、1973年に実際に起きた、石油王ジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された事件を描いたリドリー・スコット監督作『 ゲティ家の身代金』(2017)が、セクシャル・ハラスメントを繰り返していたとしてケビン・スペイシーの出演シーンを削除して撮り直しした際、出演者のマーク・ウォルバーグが10日間の追加撮影によって200万ドルのギャラを手にしたのに対し、物語の重要な登場人物である母親役のミシェル・ウィリアムズが受け撮った出演料は一日わずか80ドルだったという。そのことに対して、ジェシカは、ミシェルは偉大な女優で、あの作品で素晴らしい演技を披露していたので、フェアな対価が支払われるべきだと、Twitterで意見を表明している。
『 ゲティ家の身代金』予告