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『ディア・ハンター』から『心と体と』まで。映画で描かれる〈鹿〉の象徴性をたどって

2017 (C) INFORG - M&M FILM

『ディア・ハンター』から『心と体と』まで。映画で描かれる〈鹿〉の象徴性をたどって

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『ディア・ハンター』の鹿とロシアンルーレット



 一方、マイケル・チミノ監督の傑作『 ディア・ハンター』(1978年)には、リアルな鹿が登場する。ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外の製鉄所で働くロシア系移民の若者たち3人は、徴兵されてベトナム戦争に送られる前夜、恒例の鹿狩りへ。マイケル(ロバート・デ・ニーロ)は見事な鹿を仕留める。


 ベトナムの戦場に出た3人は捕虜になり、人民軍兵士たちの“娯楽”として、1発の銃弾を込めたリボルバーでロシアンルーレットをするよう強要される。マイケルの決死の行動によりかろうじて3人は脱出するが、その後離ればなれになる。故郷に帰ったマイケルは、昔のように仲間と鹿狩りに出かけるが、遭遇した鹿を撃つことができない。


 まずはシンプルな解釈として、〈鹿〉は命の象徴と考えられる。出征する前、マイケルたちは娯楽の一環で鹿を撃っていた。そこに、命を奪うことに対する畏怖も罪悪感もない。だが、捕虜になり銃によって死ぬ恐怖を自ら味わったことで、帰国してから鹿に猟銃を向けたとき、マイケルはおのずと戦場で奪われる人命を想像したのだ。


 〈鹿を撃つ〉から〈鹿を撃たない〉への変化が、青年の精神的成長を表すという見方もできる。生殺与奪の権を握るという未熟な全能感から、ロシアンルーレットという残酷な“通過儀礼”を経て、生の不確かさとありがたさを認識する大人の謙虚さへの成長。さらには、偶然の確率に命を託すロシアンルーレットが、人と人が殺し合う戦争の不条理さも象徴しているのだろう。



『心と体と』2017 (C) INFORG - M&M FILM


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