2018.05.01
日本映画でも同性への恋が素直に描かれるように
そのムードが近年、修正されてきた感がある。日本映画でも2018年の小田学監督作品『 サイモン&タダタカシ』では、高校生男子が同性の同級生に恋する展開なのだが、そこに葛藤や苦悩はほとんど存在しない。あっけらかんと同性を好きになり、好きになられた側もあっけらかんと受け止めている。23年前の『渚のシンドバッド』と似たシチュエーションなのに、登場人物たちの反応はまったく異なる。これが現代の高校でのリアルな状況かと聞かれれば、そうではないはずだが、映画で描く同性への恋は少しずつ変化をとげているのではないか。
『君の名前で僕を呼んで』でも、主人公のエリオの想いに対し、周囲の人物、とくに両親の大らかな対応は驚くほどだ。それゆえに彼は“自然に”行動できたわけで、映画の感情表現も“自然”になっていく。1980年代にこのような境遇は稀だったはずだが、現代の映画として、両親の態度は理想的に映る。
『君の名前で僕を呼んで』 ©Frenesy, La Cinefacture
同性に恋することは、何ら不自然ではないという考えが世間に少しずつ浸透している時代になって、「ゲイ映画」というジャンルは消え、シンプルに「ラブストーリー」のジャンルへと移り変わるのかもしれない。その特殊性に純愛のすがたを求めるBLブームなどもあるが、特殊性が消えることも、まっとうな流れなのだ。
『君の名前で僕を呼んで』
4/27(金)、TOHOシネマズ シャンテ 他 全国ロードショー
配給:ファントム・フィルム
提供:カルチュア・パブリッシャーズ/ファントム・フィルム
©Frenesy, La Cinefacture