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ルカ・グァダニーノが生まれ変わらせた『サスペリア』の新解釈とは ※注!ネタバレ含みます。

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ルカ・グァダニーノが生まれ変わらせた『サスペリア』の新解釈とは ※注!ネタバレ含みます。

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※本記事は、物語の結末に触れていますので、未見の方は映画鑑賞後にお楽しみいただくことをお勧めします。


『サスペリア』あらすじ

1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な舞踊団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団するため、スージー・バニヨンは夢と希望を胸にボストンからやってきた。初のオーディションでカリスマ振付師マダム・ブランの目に留まり、すぐに大事な演目のセンターに抜擢される。そんな中、マダム・ブラン直々のレッスンを続ける彼女のまわりで不可解な出来事が頻発、ダンサーが次々と失踪を遂げる。一方、心理療法士クレンペラー博士は、患者であった若きダンサーの行方を捜すうち、舞踊団の闇に近づいていく。やがて、舞踊団に隠された恐ろしい秘密が明らかになり、スージーの身にも危険が及んでいた――。


Index


テーマを上書きする試み



 イタリアのダリオ・アルジェント監督による、異様な美学に支配された奇妙で鮮烈な恐怖映画『サスペリア』(77)は、映画史のなかで伝説的な位置を占める作品だ。そんな映画をルカ・グァダニーノ監督がリメイクした同名作品『サスペリア』は、よくある名作リメイク企画の枠をはるかに超え、オリジナル版の要素を追いながらも全く別のものに仕上げた“問題作”になっていた。


 しかも、描写される様々な場面の意味が作中で明示されないことも多く、非常に難解な内容になっている。圧倒的に尖ったヴィジュアルや演出の数々に魅了されながらも、「一体、何だったのか…?」と混乱する観客がほとんどではないだろうか。ここでは、そんなオリジナル以上の謎に覆われた、新しい『サスペリア』の表現したものの意味を、可能な限り分かりやすく解き明かしていきたい。


『サスペリア』予告


 グァダニーノ監督はアルジェント監督と同じくイタリア人で、性的なマイノリティのひと夏の恋愛を描いた映画『君の名前で僕を呼んで』(17)で、一躍有名になっているが、本作『サスペリア』は、彼がそれ以前から制作に関わり、慎重に進めてきた企画だ。それほどにオリジナル版は、一部のクリエイターにとっては特別なものとなっている。強い雨のなか、少女が夜の森を走る情景や、悪夢のように異様な内装のダンスカンパニーの天窓からぶら下がる死体の姿、主人公がワインを飲むシーンでの不自然な構図など、その映像には鮮烈なインスピレーションや美学的なセンスが泉のように溢れている。


 グァダニーノ監督がやろうとしたのは、そんなオリジナル版に存在する複数の描写を、周到に別の意味に置き換え、映画全体のテーマを上書きしてしまうという試みだ。それは、失敗すれば蛮行とも言われかねない、リスクをともなった挑戦でもある。



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