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ルカ・グァダニーノが生まれ変わらせた『サスペリア』の新解釈とは ※注!ネタバレ含みます。
オリジナルを超えるための選択
スージーは、その超常的な力を持って、マルコス・ダンス・カンパニーの正体を突き止めた精神科医クレンペラーの記憶を消すことで、ダンスカンパニーの再興を期する。その過程で彼女は、ナチス政権がユダヤ人である彼に与えた、悲しく忌まわしい記憶をも消し去る。これが、過酷な歴史を背負った魔女としての共感と慈愛の行為なのであろう。この描写からカンパニーが生まれ変わり、本来の価値観を持った魔女の物語が紡がれていくだろうことが予感される。本作が描くのは、オリジナル版のような崩壊ではなく、魔女の再生の物語だったのだ。
『サスペリア』(c)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved
ここにおいて、もはや本作はホラー映画というより、社会的に虐げられた者たちに優しいまなざしを与える、新時代の価値観を示すマイノリティのための作品となったといえよう。その姿勢は、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督ならではの解釈、視点なのである。
映像美による、ひたすら感覚的な描写を行っていたオリジナル版を信奉する観客には受け入れ難いかもしれない。しかし、同じようなテーマと作風で、後追いするようなものを作り上げては、後進の監督には分が悪いだろう。グァダニーノ監督は、自分の資質を活かし、新しい表現でアルジェント監督と並び、そして超えるために、『サスペリア』を全く別の姿に生まれ変わらせたのだ。
文: 小野寺系
映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。
『サスペリア』
2019年1月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
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公式サイト:gaga.ne.jp/suspiria
※2019年2月記事掲載時の情報です。