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  4. ルカ・グァダニーノが生まれ変わらせた『サスペリア』の新解釈とは ※注!ネタバレ含みます。
ルカ・グァダニーノが生まれ変わらせた『サスペリア』の新解釈とは ※注!ネタバレ含みます。

ルカ・グァダニーノが生まれ変わらせた『サスペリア』の新解釈とは ※注!ネタバレ含みます。


魔女とハイジャック事件との関連



 しかし、本作の魔女集団はいささか趣が異なる。スージーに同情的になるブランや、集団から逃げ出そうとするメンバーなど、構成員のなかに倫理観らしきものが見え隠れするのだ。この点は、物語に並行して時折差し挟まれる、実際に1977年に発生したバーダー・マインホフ・グルッペ(ドイツ赤軍)によるハイジャック事件の報道がヒントとなる。


 バーダー・マインホフ・グルッペの成し遂げようとした革命とは、端的に言えば搾取構造を持つ資本主義社会の破壊である。そのために殺人やテロを繰り返す、過激な地下活動を精力的に継続していた。その攻撃対象となるのは、既存の権益とシステムを守ろうとする権力者たちであった。


 その意味においては、マルコス・ダンス・カンパニーの面々にも近い部分がある。歴史上、“魔女”という存在はヨーロッパで迫害の対象とされてきた。もう少し正確に言えば、歴史的に権力者は、統治や利益に都合の悪い存在を「魔女」と名付けたり迫害することで、マイノリティや多様性を排除してきたのだ。古代の宗教を信じるマルコス・ダンス・カンパニーの魔女たちは、キリスト教主流派が幅を利かせ、女性が差別され虐げられる社会のなかで身を寄せ合って生き抜き、ナチス政権下の第二次大戦も乗り切った、自立する女性たちなのだ。だからこそ彼女たちは、伝統のなかで洗練されてきた権威を持つバレエではなく、革新的なコンテンポラリー・ダンスを踊るのである。




 しかし、彼女たちはもちろん、虐げられるだけの善なる存在というわけでもない。カンパニー存続のため、彼女たちは必要ならば仲間を処刑し、本来なら同胞になり得る存在である団員の少女たちを犠牲にする。さらには、ナチスに迫害され妻を殺害された精神科医クレンペラーも、カンパニーの謎に迫ったことを理由に、儀式の生け贄にされようとする。その、目的のためには被害を出すことも厭わない過激化した状態が、武装化して多くの人質をとるという、赤軍のハイジャック事件に重なっていく。



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