Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. © Warner Bros. Japan LLC
「妥協は死」!『ニンジャバットマン』でアニメの極北を目指したスタッフたち ※注!ネタバレ含みます。
変幻自在のアニメ表現
さらに、この作品を一層際立たたせているのは、変幻自在に変化するアニメのタッチだ。状況やキャラを説明する為のシーンでも絵巻物や3Dで作った「ねぷた」を使うなどして、決して観客を飽きさせない。中でも出色なのは中盤に配された農夫となったジョーカーのシークエンスだろう。
バットマンとの死闘で爆発に巻き込まれたジョーカーは共に記憶を失ったハーレイ・クインと、人里離れた山奥で農夫として生活を送る。このシークエンスになると突然アニメのタッチが激変。デッサンは狂い、描線は不安定になり、まるで前衛アートが描いた悪夢のような世界へと見る者を誘う。しかもこのシークエンスは映画全体のバランスからみれば、必要以上に長いため、観客は何を見せられているのか不安になってくる。このシーンは脚本担当の中島のこだわりが強く、プロデューサーから短くして欲しいと要請されたが断ったという。その決断は成功だった。ダレ場とも言えるシーンを中盤に挿入することで、後半へ勢いを増す効果をあげ、さらに実験的なアートアニメ風のルックが作品に奥行きを与えたのだ。
『ニンジャバットマン』Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. © Warner Bros. Japan LLC
監督の水﨑はこの作品への思いをこう語っている。
「『そこそこいいね』という評価をもらうより思いっきり突っ走って『ダメだった』という人もいれば『よかった』という人もいる、両極になるような作品を狙ったというのはありますね。それに、僕は正直「これでうちの会社がなくなってもいいや」という思いで作っていた部分があって、過去に貯めておいたものも含めて、今は何も残ってないんですよ(笑)」
アメリカで配信された『ニンジャバットマン』の評価はまっぷたつに割れているという。
1点か、10点。「最低」か「最高」か。「妥協は死」という標語を掲げて突き進んだチームに何と相応しい評価ではないか。彼らが平均的な賛辞で満足するわけはないのだから。
※文中の監督コメントは劇場用パンフレットから引用しました。
文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。
『ニンジャバットマン』
2018年6月15日(金)新宿ピカデリー他ロードショー
配給:ワーナー ブラザース ジャパン合同会社
Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. © Warner Bros. Japan LLC
※2018年7月記事掲載時の情報です。