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『ウインド・リバー』脇役俳優テイラー・シェリダンが、大注目の脚本家/監督になるまで

(c)2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ウインド・リバー』脇役俳優テイラー・シェリダンが、大注目の脚本家/監督になるまで

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牧場生まれの青年が踏みしめたハリウッドの地



 シェリダンはテキサス州の田舎にある牧場で生まれ育った。自宅にはステレオもなく、彼の両親はいつも黄色のステーションワゴンに座って、そこに搭載してある 8トラック・プレイヤーで音楽を聴いていた。はたまた自宅にケーブルTVを引くまでは、映画と言えば自宅の棚に20本くらいのビデオテープがあるだけで、彼にとっての映画鑑賞は、この極度に限られたラインナップを何十回も見直すことを意味していた。時として「映画鑑賞は量よりも質だ!」という言葉を耳にするが、もしかするとこの経験は後に名脚本家となる最高の英才教育となりえていたのかもしれない。


 彼は幼い頃からカウボーイになりたかった。いや、牧場で育った以上、そうなるのが当然と感じていたはずだ。だが、人生はそう簡単にはいかない。90年代の初め、実家は経済不況のあおりを食らって牧場を手放すことに。彼が帰るべき大切な場所は失われてしまった。


 同時に、もう一つの転機も訪れる。ある日突然、一人のスカウトから声をかけられ、TV出演の話を持ちかけられたのだ。タダで飛行機に乗れて旅行できるなんてラッキー!とばかりにLAを訪れたものの、不思議な具合に話はうまく転がり、彼にはセリフ付きの役柄が立て続けにオファーされるようになる。



『ウインド・リバー』(c)2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC.  ALL RIGHTS RESERVED.


 これぞアメリカン・ドリーム!と人は祝福するかもしれない。しかし彼にとっては苦しい日々が続いた。出演はできても満足のいくレギュラーや主人公として起用されることはない。フラストレーションは溜まる一方。こんな生活を始めて早15年ほどが経過した頃、彼はどう言うわけか、脚本執筆に挑戦してみたいと感じるようになった。いい脚本が書ける確証はなかったが、少なくとも俳優としての自分が読んで嫌がるような脚本にだけはならない自信があった。


 これまでずっと頭に浮かんでいたアイディアをじっくりと醸成し、取材やリサーチなどを重ねてしっかりと着地点を見定めてから、脚本へとしたためていった。そうやって気がつくと、短期間のうちに3本のオリジナル脚本を書き上げていたという。それが『 ボーダーライン』、『 最後の追跡』、そして『ウインド・リバー』である。



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