© 2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
『ロボット・ドリームズ』マンハッタンの片隅で描かれるスウィート・ドリームズ、ビター・ドリームズ ※注!ネタバレ含みます
2024.11.19
DREAM IN MEMORIES
ラストシーンでロボットは、ドッグとの思い出の曲「セプテンバー」を流す。
Do you remember?
The 21st night of Septermber
覚えているかい?
9月21日の夜のことを
本作の実質的な主題歌といってもいいアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」は、実際には9月の歌ではない。「9月のあの夜、僕たちは一緒に踊ったよね」という思い出を歌った、12月の曲だ。そう考えると『ロボット・ドリームズ』という作品自体も、オープニングからすでにロボットの回想だったような気がしてくる。我々が劇場で目撃したのは、メモリーバンクに大切に仕舞われた、40年前のニューヨークの記憶なのではないか。ロボットが見た夢もまた、記憶のなかの夢だったのではないかーーーDREAM IN MEMORIES。
『ロボット・ドリームズ』© 2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
スクラップにされてしまったロボットの体は、ラスカルによって修復され、ラジカセボディに生まれ変わった。彼はいつだって、再生ボタンを押して「セプテンバー」を流すことができる。いつでもあの時代の、あの街の、あの空気を吸い込むことができる。ロボットは、本当の意味で“心”を獲得したのだろう。『オズの魔法使』のブリキ男みたいに。
パブロ・ベルヘルがかつて過ごした、ニューヨークの記憶。ロボットがかつてドッグと過ごした、あの日々の記憶。そして我々観客がかつて目撃した、数々の映画の記憶。作り手と、登場人物と、受け手の記憶が三つ巴で交錯するからこそ、『ロボット・ドリームズ』はとてつもない引力を持ち得ている。
マンハッタンの片隅で描かれるスウィート・ドリームズ、ビター・ドリームズ。映画の歴史にまたひとつ、いつまでも我々の記憶のなかで生き続けるような傑作が産み落とされた。
(*1)https://www.festival-cannes.com/en/2023/robot-dreams-an-interview-with-the-director-pablo-berger/
(*2)https://www.theguardian.com/film/2013/jul/11/silent-film-blancanieves-pablo-berger-interview
文:竹島ルイ
映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。
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配給:クロックワークス
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