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『犬王』湯浅政明の抑制と計算が行き届いた、新時代のミュージカル・アニメーション

©2021 “INU-OH” Film Partners

『犬王』湯浅政明の抑制と計算が行き届いた、新時代のミュージカル・アニメーション

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『犬王』あらすじ

室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。


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止まらない湯浅政明の快進撃



 湯浅政明の快進撃が止まらない。活動をこの5年だけに絞っても、『夜は短し歩けよ乙女』(17)、『夜明け告げるルーのうた』(17)、『きみと、波にのれたら』(19)と3本の劇場用作品を手がけ、Netflixリミテッド・シリーズとして「DEVILMAN crybaby」(18)、「日本沈没2020」(20)を発表し、文化庁メディア芸術祭大賞に輝いたTVアニメ「映像研には手を出すな!」(20)を創り上げた。この尋常ならざる質と量は、タダゴトではない。


 “破天荒”といっていいくらいに、躍動的な映像をスクリーンに叩きつける、変幻自在のイマジネーション。湯浅政明はいつだって、想像力の臨界点を易々と突破する。それ故にアートフィルム的とみなされることも多いが、彼自身はその文脈で語られることを極端に嫌う。分かる奴だけ分かれば良いという、オレismな芸術家気質ではなく、アニメーションの想像力、アニメーションのダイナミズムをそのまま作品にしているだけなのだろう。彼は生粋のエンターテイナーなのだ。


「映像研には手を出すな!」予告


 少し話はそれるが、「映像研には手を出すな!」で度肝を抜かれたシーンがあった。主人公たちがアニメ研究会の特別上映で『残され島のコナン』(※「コナソ」との見解もあり)という作品を鑑賞するのだが、これが思いっきり「未来少年コナン」(78)なのである。1978年にNHKで放送された、天才・宮崎駿の実質的な監督デビュー作。映像研メンバーの浅草みどりは興奮した口調で、コナン演出の素晴らしさを語る。


 「見て分かるアニメーション描写で、リアリティを醸し出しておるんじゃ!この高低感、場所の説明、走って戻れるのんびり感、主人公の頼もしい能力!」


 熱を込めて語る浅草みどりの姿は、まるで湯浅政明本人のようであった。




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