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『犬王』湯浅政明の抑制と計算が行き届いた、新時代のミュージカル・アニメーション

©2021 “INU-OH” Film Partners

『犬王』湯浅政明の抑制と計算が行き届いた、新時代のミュージカル・アニメーション

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止まらない湯浅政明の快進撃



 湯浅政明の快進撃が止まらない。活動をこの5年だけに絞っても、『夜は短し歩けよ乙女』(17)、『夜明け告げるルーのうた』(17)、『きみと、波にのれたら』(19)と3本の劇場用作品を手がけ、Netflixリミテッド・シリーズとして「DEVILMAN crybaby」(18)、「日本沈没2020」(20)を発表し、文化庁メディア芸術祭大賞に輝いたTVアニメ「映像研には手を出すな!」(20)を創り上げた。この尋常ならざる質と量は、タダゴトではない。


 “破天荒”といっていいくらいに、躍動的な映像をスクリーンに叩きつける、変幻自在のイマジネーション。湯浅政明はいつだって、想像力の臨界点を易々と突破する。それ故にアートフィルム的とみなされることも多いが、彼自身はその文脈で語られることを極端に嫌う。分かる奴だけ分かれば良いという、オレismな芸術家気質ではなく、アニメーションの想像力、アニメーションのダイナミズムをそのまま作品にしているだけなのだろう。彼は生粋のエンターテイナーなのだ。


「映像研には手を出すな!」予告


 少し話はそれるが、「映像研には手を出すな!」で度肝を抜かれたシーンがあった。主人公たちがアニメ研究会の特別上映で『残され島のコナン』(※「コナソ」との見解もあり)という作品を鑑賞するのだが、これが思いっきり「未来少年コナン」(78)なのである。1978年にNHKで放送された、天才・宮崎駿の実質的な監督デビュー作。映像研メンバーの浅草みどりは興奮した口調で、コナン演出の素晴らしさを語る。


 「見て分かるアニメーション描写で、リアリティを醸し出しておるんじゃ!この高低感、場所の説明、走って戻れるのんびり感、主人公の頼もしい能力!」


 熱を込めて語る浅草みどりの姿は、まるで湯浅政明本人のようであった。




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