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『犬王』湯浅政明の抑制と計算が行き届いた、新時代のミュージカル・アニメーション

©2021 “INU-OH” Film Partners

『犬王』湯浅政明の抑制と計算が行き届いた、新時代のミュージカル・アニメーション

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大塚康生スピリットの継承



 「未来少年コナン」で作画監督を務めているのは、大塚康生。『太陽の王子 ホルスの大冒険』(68)、『パンダコパンダ』(72)、『ルパン三世 カリオストロの城』(79)、『じゃりン子チエ』(81)などなど、高畑勲&宮崎駿のアーリー・ワークスを陰で支えた名アニメーターだ。大塚は口癖のように「アニメなんだから、とにかく絵を動かせ!」と口酸っぱく語っていたという。


 アニメーションとは、一枚の絵に命を吹き込む作業だ。しかし実写の動きをそのままアニメにトレースしても“動き”は出てこない。表現を徹底的にデフォルメすることで、受け手=観客は初めて絵が動いていることを実感する。だからこそ優れたアニメーターは、事物がどのように動いているのかという作動原理に着目し、アレンジを加え、魔法をかける。絵を動かす喜び、プリミティブな初期衝動。これぞまさしく大塚康生ism!今現在、そのスピリットを一番引き継いでいる存在は湯浅政明なのではないか?筆者は、「映像研には手を出すな!」で大塚と湯浅が邂逅する瞬間を目の当たりにして、そんな想いに駆られてしまったのである。


『犬王』予告


 すっかり前置きが長くなってしまったが、湯浅政明監督の最新作が『犬王』(22)。脚本に野木亜紀子(代表作:「逃げるは恥だが役に立つ」、「アンナチュラル」)、音楽に大友良英(代表作:「あまちゃん」)、キャラクター原案に松本大洋(代表作:「鉄コン筋クリート」、「ピンポン」)という、ジャパニーズ・ポップカルチャーを牽引する豪華メンツを揃えた、ライヴ・パフォーマンス・ムービーだ。


 本作でも、自由奔放な湯浅節は健在。だがそれ以上に「ライヴ演出として抑制すべき部分は抑制する、理知的な計算」が光った作品に仕上がっている。




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