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『黒い十人の女』を甦らせた渋谷系映画とは?

『黒い十人の女』を甦らせた渋谷系映画とは?


若い観客が再発見した現役の巨匠・市川崑



 しかし、90年代も後半になってくると、有名作品はあらかた発掘し終わっていた。そこに登場したのが、ピチカート・ファイヴPRESENTSの『黒い十人の女』だった。シネセゾン渋谷でレイトショーされることになったが、それまでの渋谷系映画のリヴァイヴァルは、ほぼ洋画で占められており、市川崑は当時、現役の巨匠監督というイメージが強いだけに、果たしてこの試みは成功するか否か注目を集めたが、フタを開けてみると、シネセゾン渋谷で13週ものロングラン上映となり、レイトショー歴代動員記録2位(1位は同じくリヴァイヴァル作品の『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』)を打ち立てた。


 公開当時は、プレイボーイの主人公に弄ばれた女たちが復讐するという物語が注目されたが、現代ではさほど珍しいものではない。内容よりも、美しいモノクロ映像、グラフィカルな市川崑の映像センスによって捉えられた60年代の東京、テレビ業界、そして岸恵子、山本富士子をはじめとする女優たちを陰影豊かに映し出す映像美学は、まさに90年代の渋谷系映画にうってつけだった。


 こうして『黒い十人の女』と共に市川崑も、それまでの日本映画を代表する巨匠監督とは別の視点から若い観客に再発見され、以前から評価が高かった文芸映画以外にも、実験的で狂騒的な魅力に満ちた初期作品に注目が集まるきっかけとなった。また市川崑も、巨匠に相応しい大作を手がける一方で、漫画のコマを立体化させた実験精神に満ちた紙人形アニメ『新選組』(00年)を手がけるなど、『黒い十人の女』の再評価と人気は、晩年の市川崑に新たな刺激を与えたようだ。その証拠に、『新選組』の主題歌を手がけたのは小西康陽だった。



文: モルモット吉田

1978年生。映画評論家。別名義に吉田伊知郎。『映画秘宝』『キネマ旬報』『映画芸術』『シナリオ』等に執筆。著書に『映画評論・入門!』(洋泉社)、共著に『映画監督、北野武。』(フィルムアート社)ほか



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 『黒い十人の女』  価格 ¥1,800+税

 発売元・販売元 株式会社KADOKAWA

(C) KADOKAWA 1961

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