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『ダークシティ』R指定の理由が「奇妙だから」!?公開20周年を迎える奇想天外なSFノワール

© Photofest / Getty Images

『ダークシティ』R指定の理由が「奇妙だから」!?公開20周年を迎える奇想天外なSFノワール

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自由で幅広い解釈が成り立つところも魅力のひとつ



 もちろんそれだけではない。本作は見方によってまるで八面鏡にでも映し出すかのように、もっと様々な角度での解釈が可能なのかもしれない。例えば、人間に記憶を注入にして別人へと仕立て上げていくストレンジャーの存在は、ある意味、映画の監督や脚本家のようでもある。あらゆる作品は、彼らがキャラクター一つ一つに固有の記憶を植え付けることで起動していくわけだが、完全に制御していたはずのキャラクターがある地点にまで達すると、いかなる作り手の意志を離れて自由自在に動き始める・・・といった製作秘話はよく耳にするものである。


 また、監督と俳優の関係性についても同様のことが言えるだろう。そもそも俳優という職業はそれぞれが与えられたセリフや個性、そして記憶を血肉化して各キャラクターになりきるもの。そして監督からしてみれば、役になりきった俳優がカメラの前で「いかなる化学反応を引き起こしていくか?」が最も重視すべきポイントとなる。その様子をつぶさに観察して事態の推移を見守っていく上で、監督の目線はまさにストレンジャーのそれと極めてよく似たところがあるのかもしれない。かくも本作が「映画作り」そのもの、あるいは「表現すること」の真理に触れるかのような寓話性を帯びているところも非常に興味深いポイントなのだ。


 ここには何が正解かという決まりごとは何ら存在しない。星の数ほど解釈の余地があるし、そうやって人それぞれが自由自在に受容することができるところもまた、本作の輝かしい魅力であろう。


 ちなみに本作が日本で劇場公開されたのは、1998年11月28日とのこと。すなわちこの映画は、もうじき人知れず公開20周年を迎える。せっかくの節目なので、是非多くの方にこの「奇妙な世界」を改めて再訪して頂きたい。きっと20年を経た今だからこそ気付かせてくれる“何か”があるはずだ。




文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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『ダークシティ』

ブルーレイ¥2,381 +税 DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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