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『ダークシティ』R指定の理由が「奇妙だから」!?公開20周年を迎える奇想天外なSFノワール

© Photofest / Getty Images

『ダークシティ』R指定の理由が「奇妙だから」!?公開20周年を迎える奇想天外なSFノワール

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深く焼きついて離れない“ストレンジャー”という異形の者たち



 映画の始まり方はアメリカの40年代から50年代を描いたような、正統派のフィルム・ノワール風。ちょうど50年代に公開された映画に同じ”Dark City”という原題の『虐殺の街』というノワールがあるのだが、それと錯覚させるような狙いもあったのかもしれない。ところが、その後の展開はどうだろう。殺しやミステリー、ファム・ファタールの存在を置き去りにして少しずつミクロの視点をマクロへと移行。デザイナーのパトリック・タトポロス(『アイ、ロボット』(04)『ピッチブラック』(00)『インデペンデンス・デイ』(96)など)が手がける斬新なビジュアルも手伝って、観る者の想像を超えたダークなSF色をあらわにしていく。


 そして、極め付けとなるのが”ストレンジャー”という奇妙な集団の存在だろう。彼らときたら、顔は青白く、黒のボンテージ風の衣服に身を包み、パッと見ではキョンシー、ヘルレイザー、ノスフェラトゥ(吸血鬼)を思わせるいでたち。はたまた、ミヒャエル・エンデの『モモ』に出てくる「灰色の男たち」のように神出鬼没で不気味な者たちだ。



『ダークシティ』© Photofest / Getty Images


 そんな彼らが一日一回、真夜中に集まって一斉に「チューン」と呼ばれる儀式を執り行うと、街全体の時間がはたと停止。そこから彼らの手作業で住民たち一人一人の「記憶」を入れ替えるという、世にも奇妙なお仕事が延々と展開されていくこととなる。そうやってチューンが完了すると、住民たちの前日までの記憶は無くなり、全くの別人へと変貌しているというわけなのだ。


 誰が?なぜ?なんのために?いやいや、そんな基本的な問いかけをしてはいけない。なぜなら具体的な答えなど無いのだから。こんな基本的なところが気になってしまうと、もうこの先へは進めないどころか、先のMPAA担当者のように「奇妙だから」という理由でR判定をつけかねない。「奇妙は奇妙。それでいいじゃないか!」と面白がれるには、ある種の能力や才能が必要ということか。



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