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『ファントム・スレッド』これがポール・トーマス・アンダーソン流、デザイナーとモデルの関係性
2018.10.31
映画の中のデザイナーとモデルたち
ファッションデザイナーを主人公にした映画では定番と言えるほど、デザイナーとモデルの関係性は劇的で、時に残酷である。例えばイヴ・サン・ローランのミューズと知られるルル・ド・ラ・ファレーズ。フランスで最も由緒のある貴族の家系に生まれ、社交界の花でもあった彼女はローランにあまたの功績をもたらし、彼の服を世界に押し出した大きな存在となった。同性愛者であったローランとは複雑な関係性を語られることが多く、その愛憎の関係性は映画の格好の題材として選ばれ、サンローランの自伝を映画化したもの、『イヴ・サンローラン』(2014)など重要な位置で登場する。
『ファントム・スレッド』(C) 2017 Phantom Thread, LLC. All Rights Reserved.
また、アンディ・ウォーホルが映画を撮っているときに、彼の運営するファクトリーのアイコンとして崇め奉られたイーディ・セジウィック。ルル同様、裕福な家に生まれた恵まれた少女はウォーホルと共に時代の寵児としてもてはやされ、アイドルとして消費しつくされ、最後はウォーホルのクリエイションとしての関心が他の女性(ニコ)に移ったことで、あっという間に忘れ去られた。映画『ファクトリー・ガール』(06)は彼女の28歳の短い生涯をシェナ・ミラーが演じたものだ。
このようにデザイナーはモデルの人生を食い尽くすモンスターとして描かれることが多いのに対し、そこは一筋縄ではいかないPTAのこと。この映画では、むしろ、モンスターとして成長していくのはモデルの方なのであるから面白い。