© 2025 made in copenhagen Aps, Pink Productions s.r.o.
『プーチンの愛国教室』陰謀論をインストールされる子どもたち、戦時下の教育現場に見る「現実」という暴力
陰謀論をインストールされる子どもたち
ウクライナがロシアから離れ、西側の文化に接近することを指して、プーチンはそれが西側諸国による介入や反ロシア勢力、いまも残るナチス勢力によって生じたものだと説明している。こうした自国本位で「陰謀論」と「歴史修正主義」に染まった荒唐無稽といえる論理が、ロシアの歴史的な共同体を守り、外部勢力からロシアを防衛するという歪んだストーリーに繋がり、その後の軍事行動を正当化するのである。そこには、ウクライナ人を救うと称してウクライナ人を殺害するという、大きな矛盾が横たわっている。
このような陰謀論を幼い頃から叩き込まれる子どもたちは、たまったものではない。しかし、強権的なロシア政府の下、荒唐無稽な歴史観がインストールされていく状況を、教師たちは止めることができない。止めるどころか、反対する者は国家の敵として逮捕されるという状況。その中で、個々人に温度差はありながら、教師はそれに加担し、もはやギャグのように稚拙な歴史観や倫理を教えることを強いられるのである。

『プーチンの愛国教室』© 2025 made in copenhagen Aps, Pink Productions s.r.o.
この構図は、まさにかつての日本の戦時そのものといえる。何度も映画化された壺井栄原作の「二十四の瞳」では、第二次大戦時の日本の離島で、子どもたちを愛情をもって教育し、やがて戦場に送りださなければならない教師の葛藤が描かれていた。パーシャたち教師は、そんな心が引き裂かれるような体験をすることとなる。まだまだあどけなさの残る青年たちが、死の危険を冒し、人を殺すことを強いられる戦地へと赴くことを、表立って止めることができないのだ。
恐ろしいのは、そんな状況が一気に国中を覆い尽くしてしまうということだ。日本の民衆もかつて、これと全く同じ状況下に置かれ、結果的に当時の敵国と自国に多くの死者を出すこととなった。そうした状況を生んだ原因は、政府や軍部の強権的な動きにあったことは間違いない。だが同時に、多くの人々がリスクを取って、真実を訴えることや公に疑問を述べることを選ばなかった、もしくは選べなかったからでもある。