※本記事は物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。
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他人の評価で現実を判断する、歪んだ認識
われわれにとって、「顔」とは何なのか。社会の閉鎖性からくる理不尽な構図をエンターテインメントの中で描くことで、韓国の映画・ドラマ界を牽引しながら現代の問題を告発してきたヨン・サンホ監督。そんな彼が、独自の視点で厳しく問いを突きつけたミステリアスな映画が、この度公開された『顔 -かお-』(25)である。
『顔 -かお-』は一見すると、醜いと言われ続けた女性の悲劇を描いた作品に見える。しかし本作は、そうした悲劇を引き起こした原因を、単純な“ルッキズム”批判には収斂させない。むしろここで問われているのは、「人間は、他者を実際に見ているのか」「その視線は、本当に自分自身のものなのか」という、より深刻で根源的な問題である。
物語の起点となるのは、母親の死をきっかけに、彼女の過去を調べ始めた息子ドンファン(パク・ジョンミン)。盲目の著名な印鑑職人である父イム・ヨンギュ(クォン・ヘヒョ)を敬い、その仕事を支えていたドンファンのもとに、40年前に消息不明となった母ヨンヒの遺体が発見されたという知らせが届く。

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ドキュメンタリー番組のプロデューサー、キム・スジン(ハン・ジヒョン)とともに調査を進める中で、ドンファンは母親が幼い頃から周囲の人々に「醜い」と言われ続けてきたことを知る。家族やかつての知人たちへの聞き込みによって、次第に浮かび上がってくる母親の知られざる人生。そして、盲目だった父親との結婚生活。母はいったいどのような人生を送り、なぜ死を迎えることになったのか。ドンファンとスジンは、母親をめぐる証言を辿りながら、その死に隠された真実へと迫っていく。
本作の核心は、その真相部分にこそある。ヨンヒは、生まれてからずっと「醜い」と言われ続けてきたらしい。家族からは人間らしい扱いを受けず、家庭を離れて工場で働くことになっても、その容貌を判断される。やがて彼女は、自分の容貌を見ることのできない盲目の男性と結婚することになる。劇中でとくにショッキングな展開は、周囲の人々が彼女を「醜い」と評していたことを、後に夫が知ってしまう箇所である。
ここから物語は悲劇的な方向へ進んでいく。夫は、自分が盲目であったために周囲から馬鹿にされていたのだと思い込み、「なぜ誰も妻が醜いと教えてくれなかったのか」と怒りを募らせる。夫は、自分自身の経験ではなく他人の評価によって現実を判断し、その歪んだ認識を内面化してしまうのだ。