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『顔 -かお-』閉鎖された共同体の不健全、押し潰される個人 ※注!ネタバレ含みます

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『顔 -かお-』閉鎖された共同体の不健全、押し潰される個人 ※注!ネタバレ含みます

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共同体は人間を殺す装置になる



 現代の韓国は、外見への社会的関心が比較的強い社会として知られている。美容産業の規模や美容整形の浸透、K-POPや映像文化が流通させる高度に洗練された美的基準。就職活動でさえ“ものを言う”外見は、個人的な趣向を超えて、社会的な価値判断に強く結びついている。もちろん、それは韓国だけの現象ではない。外見の可視化やそれを評価しようとする風潮は、SNSの普及によって、世界中の人々の間でも先鋭化してきている。そしてそれは、社会がもともと持っていた既存の同調圧力とも接続されやすい。


 この問題は、もちろん日本と無縁ではない。とくに、個人が共同体から切り離されることへの恐怖や、周囲と違う意見を口にすることへの不安、一度定着した評判を覆すことの難しさなどは、社会問題としてそのまま共有できるものだ。



『顔 -かお-』ⓒ 2025 WOWPOINT, ALL RIGHTS RESERVED.


 ヨン・サンホが、韓国を含めた様々な社会や共同体の在り方に強い違和感を持ち、それを創作の原動力にしていることは、想像に難くない。社会の悪い部分を見つけ、それをカリカチュアし、極端な状況に置くことで構造を可視化する。彼が提供してきた、ゾンビ、怪物、宗教的熱狂、集団リンチ、そして偏見は、いずれも社会の“ある側面”をあぶり出すための要素として機能してきた。


 一人の女性が「醜い」という言葉によって人生を破壊される。その言葉を発した人間は、一人ひとりを見れば決定的な悪人ではないかもしれない。しかしその言葉が共同体の内部で共有され、事実として固定化されたとき、共同体は一人の人間を殺す装置になる。だが、その共同体も、結局は一人ひとりの個人が構成している。だからこそ、本作では自分で見ること、自分で考えること、自分で判断することの重要性が示唆されている。


 『顔 -かお-』は、「人間の価値は顔では決まらない」などという、ありふれた教訓を描いた映画ではない。むしろ、他人が与えた評価によって人間を理解したつもりになることを脅威として表現し、そうした態度を告発する、きわめて鋭い作品なのである。そしてその刃の切先は、しばしば他人の評価や既存の価値判断に巻き取られ、自分自身の認識で世界を見ることを忘れてしまう、われわれ観客自身にも向けられているはずである。



文:小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

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『顔 -かお-』

全国ロードショー中

配給:ツイン 

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