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『007 スカイフォール』『ミッション:インポッシブル』と刺激しあって切り開く、スパイ映画の新時代

SKYFALL(C)2013 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc.

『007 スカイフォール』『ミッション:インポッシブル』と刺激しあって切り開く、スパイ映画の新時代

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お互いの距離感が近まった?二大シリーズに見られる変化



 筆者の印象だと、これまでの歴史の中で、両シリーズは同じスパイ物としてうまく住み分けを図ってきたように思える。「007」に個人主義、あるはスタンドプレーの美学が詰まっているとしたら、「ミッション」にあるのはチームプレーの醍醐味。もちろん英米の考え方や組織、文化の違いといったものも濃厚に現れている。


 だが近年になって、とりわけこの2、3作では、両シリーズがどこか近しい距離感で互いにボールを投げ合い、影響を及ぼしあっているように感じられる節がある。全く異なるミッションを描きながらも、ふと両作が同じ方向を見つめ、同じ課題を共有しあっているような印象がほとばしるのだ。


 現に、ストーリー上では面白いほどの共通点がいくつも見つかるようになってきた。まず『カジノ・ロワイヤル』(06)以降、ボンド映画では世界を股にかけた秘密結社の存在をうっすらとフィーチャーさせてきたが、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(15)ではこれに呼応するかのように“シンジケート”という秘密組織がお目見えする。


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『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』予告


 それに両作ともに名優(レイフ・ファインズ、アレック・ボールドウィン)を起用し、シリーズ全体に影響を与える重要な役割を担わせているところも共通している。MI6や00ナンバーのスーパーエージェント、あるいはIMFといった特殊機関そのものが存続の危機にさらされる点も同じだ。


 なぜこのような事態となったのか。そのきっかけは『007 スカイフォール』にあったと感じるのは筆者だけだろうか。


 この作品は、007シリーズの歴史と伝統、そして世界情勢を縦にも横にも綿密に編み込み、またそこにサム・メンデス監督の“作家性”も相まって、現代においてスパイ映画を作り続けていくことの覚悟と気迫がみなぎる傑作に仕上がっていた。この真剣勝負に観客も熱狂し、本作は007シリーズの伝統を更新するのみならず、スパイ映画というジャンルそのものに新時代の光をもたらす存在となった。



『007 スカイフォール』SKYFALL(C)2013 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc.


 これほどの躍進ぶりを見せられ、同じスパイ映画に身を置くトム・クルーズが黙っているわけがない。クリストファー・マッカリーをシリーズ最新作の要に据えると正式発表したのが2013年の夏。オスカー受賞脚本家でもあるマッカリーが全精力を注入して世界観を構築しているだけあり、『M:I』シリーズは『ローグ・ネイション』でこれまで以上の躍進を遂げた。純然たるエンタテインメントでありながら、『スカイフォール』に並ぶほどの格調の高さを感じさせる傑作へと仕上がったのだ。


 特筆すべきは、『スカイフォール』と同じく、『ローグ・ネイション』もまた「時代」という巨大な壁から逃げなかったことだろう。激変する時代における自分たちの存在意義は何なのか。これまで誰もが意識していたのに描けなかったスパイ映画の命題に挑むことで、新たな「リアル」と「フィクション」の関係性を、この両作は掴み取ることができたのかもしれない。



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