ゴールドマンを魅了したポイント
一方、同じ頃、ハンサムで早撃ちの名手として名を馳せていたサンダンスことハリー・アロンゾ・ロングボーは、ワイオミング州のサンダンスで悪名を轟かせていたことから、サンダンス・キッドと名乗るようになる。2人がいかにして出会い、生涯コンビを組むことになったかは定かではない。何しろ、ブッチに比べてサンダンスの情報が極めて少ないのだ。
ゴールドマンが魅了されたのは、2人が時代の転換期で盗む物がなくなった西部を捨てて、南米のパタゴニアに新天地を求め、そこで再び銀行強盗に明け暮れながら自由気ままな生活を楽しんだ後も、チリに移動してそこそこ荒稼ぎしていたとのこと。その間実に8年。史実によると、ブッチとサンダンスは西部よりむしろ南米で、伝説的な悪党として記憶される存在なのだ。つまり、映画ではクライマックスの舞台となるボリビアに辿り着くまで、彼らはそれなりに、否、思う存分"第2の人生"を謳歌していたのである。
ここにゴールドマンは激しいショックを受けた。なぜなら、彼が師と仰ぐ作家、スコット・フィッツジェラルドがかつて書き記した、「アメリカ人にとって"第2の人生"などありえない」という絶対的な教訓を覆すだけの説得力が、2人の無法者にはあったというわけだ。また、映画ではボリビアで最期を迎えたことになっているブッチとサンダンスだが、残された死体は2人のものではなかったという説が、墓の消失により証明不能になったことも、ゴールドマンの興味を余計に掻き立てたことも確かだ。