1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 明日に向って撃て!
  4. 笑いの影に悲しみが。バート・バカラックが『明日に向って撃て!』に仕掛けたメロディのトリック
笑いの影に悲しみが。バート・バカラックが『明日に向って撃て!』に仕掛けたメロディのトリック

(c)Photofest / Getty Images

笑いの影に悲しみが。バート・バカラックが『明日に向って撃て!』に仕掛けたメロディのトリック

PAGES


『明日に向って撃て!』あらすじ

19世紀末の西部、二人組の強盗ブッチとサンダンスが銀行強盗を繰り返し自由奔放に生きていた。しかし、近代化に向かう時代に彼らの生き方はあまりにも旧弊だった。そのなかで新たな夢を求めて、南米ボリビアへと向かうが・・・。



 『明日に向って撃て!』は廃れゆく西部劇というジャンルに、ポストモダンを持ち込んだ画期的な作品だ。ポストモダン、言い換えると脱近代主義は、主に建築やデザインの分野で使われる言葉だが、映画の世界に於いて、既成の概念を全く新しい方法で打ち破った本作に対しても、この表現は妥当だと思う。


Index


第一の立役者、監督ジョージ・ロイ・ヒル



 第一の立役者は勿論、監督のジョージ・ロイ・ヒルだ。当時の20世紀フォックスのプロデューサー・コンビ、リチャード・ザナックとデヴィッド・ブラウンはロイ・ヒルの起用に懐疑的だったが、ポール・ニューマンと脚本家のウィリアム・ゴールドマンが強く推薦したために、製作者側が折れる形で監督の人選は決定する。それが、改革の始まりだった。


 ゴールドマンの脚本を熟読したロイ・ヒルは、映画を西部の雄大な景色を背景にしつつも、笑いと悲しみが相半ばするコメディドラマにしようと決意する。こうして、人生の半ばを過ぎてもなお泥棒を止められない男2人と、彼らに寄り添う1人の女性の奇妙な三角関係が、美しい西部と南米を舞台に綴られることになる。


『明日に向って撃て!』予告


 ロイ・ヒルの色彩感覚も画期的だ。ブッチ(ポール・ニューマン)とサンダンス(ロバート・レッドフォード)の悪行を映した古いフィルムが、コトコトと音を立てて回る冒頭のタイトルロールではセピア色に描かれる。やがて、本編が始まってブッチとサンダンスが本格的に躍動し始めると、いつしか、セピア色はカラーに変化している。さらに、朝靄が晴れて日が差し始めると、色のバリエーションが徐々に明確になってゆく。観客の目が色彩によって覚醒していくような演出は、ロイ・ヒルならではのアイデアだ。


 色に関してはその後、ブッチ、サンダンス、エッタ(キャサリン・ロス)が西部を後にして、ニューヨーク経由でボリビアに到着するまでの間、再び、カラー→セピア→カラーと変化してゆく。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 明日に向って撃て!
  4. 笑いの影に悲しみが。バート・バカラックが『明日に向って撃て!』に仕掛けたメロディのトリック