『明日に向って撃て!』あらすじ
19世紀末の西部、二人組の強盗ブッチとサンダンスが銀行強盗を繰り返し自由奔放に生きていた。しかし、近代化に向かう時代に彼らの生き方はあまりにも旧弊だった。そのなかで新たな夢を求めて、南米ボリビアへと向かうが・・・。
1960年代後半から70年代半ばにかけて、ハリウッドを席巻したムーブメントがあった。俗に言う"アメリカン・ニューシネマ"である。ベトナム戦争終結後、屈折したアメリカ国民の心情を汲み取る形で台頭した、いわゆるアンチ・ヒーロー映画が、国家の在り方について懐疑的にならざるを得なかった人々の心をとらえたのだ。『俺たちに明日はない』(67)、『卒業』(67)、『イージー・ライダー』(69)、『真夜中のカーボーイ』(69)、『M★A★S★H マッシュ』(70)、そして『ファイブ・イージー・ピーセス』(70)などが代表作として挙げられる。
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アメリカン・ニューシネマの枠に収まらない作品
『明日に向って撃て!』(69)も同じく"アメリカン・ニューシネマ"にカテゴライズされているが、他にも色々な要素を秘めている点が少し異色だ。大開拓時代が終焉を迎えつつある西部を舞台にした、遅れてきたウエスタンであり、そんな時代に凝りもせず強盗稼業に勤しむブッチとサンダンスの犯罪活劇であり、何よりも、年甲斐もなく夢を追いかけた男たちの痛々しい青春映画でもあるのだから。それは、脚本家、ウィリアム・ゴールドマンが抱いたある興味から始まった。
『明日に向って撃て!』予告
小説家兼劇作家であり、脚本家としては本作と『大統領の陰謀』(76)でアカデミー脚本賞に輝いているゴールドマンが、主人公の泥棒コンビ、ブッチとサンダンスについて調べ始めたのは1950年代後半のこと。以来、脚本脱稿までの8年間、彼は2人が歩んだ人生に魅了されていく。ブッチ・キャシティ、本名ロバート・ルロイ・パーカーは元々牧童だったが、ある日出会った無法者、マイク・キャシディに影響されて彼の家名を拝借。当時、食肉解体業を生業にしていたことから、ファーストネームはブッチになったと言われている。こうして生まれ変わったブッチは、ロッキー山脈を根城に徒党を組んで銀行襲撃等を繰り返し、後に映画化されることになる、西部開拓史に名を刻む無法者集団"ワイルドバンチ"の一員として暴れまくることに。