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笑いの影に悲しみが。バート・バカラックが『明日に向って撃て!』に仕掛けたメロディのトリック

(c)Photofest / Getty Images

笑いの影に悲しみが。バート・バカラックが『明日に向って撃て!』に仕掛けたメロディのトリック

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映画全体を包み込む物悲しいワルツの正体は?



 映画の初号試写で観客が笑い続け、試写後にスタンディング・オベーションが起こるのを目の当たりにしたジョージ・ロイ・ヒルは、1人ショックを受ける。確かに、映画はニューマン×レッドフォードの掛け合いが随所で笑いを取るが、ロイ・ヒルがコメディと共に目指したのは、笑いの裏側にある生きることの悲哀だったからだ。


 監督の意図を誰よりも理解していたのはバカラックだったかも知れない。彼は"The Old Fun City"の曲中に物悲しいワルツ" Not Goin' Home Anymore "を挿入して、もはや帰る場所をなくしたブッチとサンダンスの心情を表現してみせた。実はそのワルツは、冒頭のタイトルロールでかすかに流れ、さらに、ラストショットの後、恐怖と悲しみで言葉をなくした観客の心を癒やすように、エンドロールでまた流れるのだ。まるで、ならず者たちの運命を予知していたかのように。



『明日に向って撃て!』 (c)Photofest / Getty Images


 監督の意図を汲み取った心に染み入るメロディと、そのメロディと共に記憶に焼きついて離れない映像が、西部劇を新たな段階へと押し上げたポストモダンな作品、『明日に向って撃て!』。映画の命である演出と撮影と音楽の重要性を、改めて考えさせられる。



文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。 



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