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『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』図書館は民主主義の柱。巨匠フレデリック・ワイズマンが贈る

(c)2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』図書館は民主主義の柱。巨匠フレデリック・ワイズマンが贈る

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図書館は“民主主義の柱”となる



 ニューヨーク公共図書館の関連施設には、ハーレム地区に建ち、アフリカや黒人文化にまつわる資料が多数収蔵されている「ションバーグ黒人文化研究センター」も含まれている。本作には、そのセンターが90周年を迎えた祝賀会の様子も映し出される。センター代表がスピーチのなかで紹介したのは、ノーベル賞を受賞した黒人女性作家トニ・モリスンの「図書館は民主主義の柱」という言葉だ。


 「図書館は民主主義の柱」。この象徴的なフレーズは、本作が紹介する図書館全体の取り組みを、一つの目的・理念に結びつけてくれる。現代社会において、情報を知ること、ものごとを体系的に考える力を身につけることは重要だ。



『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(c)2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved


 力を持った者だけに知恵を独占させれば、階層は固定化され、社会的な力を持たない者は支配され続けることになる。だが自分に知識が備わっていれば、政府による政策にも、悪辣な企業にも、歴史や社会の姿をねじ曲げようとする嘘にもだまされることはない。そして、それに対抗する術も持つことができる。だからこそ、どんな人にも無償で等しく知識を分け与える図書館は、民主主義の柱になり得るのである。 


 そして、知識は新しい世界への窓となり、外の世界への扉ともなる。旧弊な固定観念の鎖を断ち切り、精神的な自由を与えてくれるものだ。誇りを持って図書館で働く人々、知識を得るために図書館を利用する人々の姿を写し取った本作の映像には、それぞれの熱い“知”への情熱が刻印されているように感じられる。「こんな素晴らしい図書館が近所に欲しい」……本作はそう思わずにいられないドキュメンタリーである。



文: 小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter: @kmovie



作品情報を見る



『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

2019年5月18日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー!

配給:ミモザフィルムズ/ムヴィオラ

公式サイト: http://moviola.jp/nypl/

(c)2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved


※2019年5月記事掲載時の情報です。

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