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『トゥルー・ロマンス』主演の二人を好きにならずにいられない!好き過ぎて結末まで変えてしまった監督トニー・スコット ※注!ネタバレ含みます。

True Romance (c) 1993 Morgan Creek Productions, Inc. Package Design ©2014 Morgan Creek Productions, Inc. and Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『トゥルー・ロマンス』主演の二人を好きにならずにいられない!好き過ぎて結末まで変えてしまった監督トニー・スコット ※注!ネタバレ含みます。

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最高の布陣で作られた“映画好きのボンクラが見る夢”



 『トゥルー・ロマンス』には、やたらとサブカルを引用するセリフの応酬や、ダイアログ主体で進められる語り口、犯罪のハードルがやたらと低い登場人物たち、寄り道しながら散発的に進むストーリーなど、タランティーノ印と呼べる作風が既に詰まっている。同時にスタイリッシュな映像美やアクション描写の冴えなど、トニー・スコットの刻印もしっかりと押されており、なによりもトニー・スコットがスタイルだけの監督でなく、エモーションを視覚的に表現する技に長けていることを証明した。


 おそらくタランティーノの当初の目論見通り、『トゥルー・ロマンス』をタランティーノ本人が監督し、16㎜の低予算映画として撮られていたら、完璧主義者のタランティーノは自分の拙さに怒って『トゥルー・ロマンス』を葬り去っていたかも知れない。


 実際、クラレンスという名前や誕生日に娼婦をプレゼントするアイデアなど『トゥルー・ロマンス』の多くの要素はタランティーノが無名時代に自主制作した『My Best Friend’s Birthday』が原型になっている。そして『My Best Friend’s Birthday』のフッテージを見る限り、当時のタランティーノに『トゥルー・ロマンス』をまとめ上げる監督としての力量が備わっていたかは疑問だ。しかも初期バージョンの脚本では、後に『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)になるストーリーも含めた通常の倍の分量がある大長編だったというのだ。


 それにしても画期的だったのは、『トゥルー・ロマンス』によって“掛け値なしのボンクラ”がこれほどの規模のメジャー映画の主人公になったことだ。


 タランティーノが「最も自伝的な作品」と語っているように、『トゥルー・ロマンス』の主人公クラレンスはタランティーノの分身として生み出された。クラレンスが働いているコミックショップはタランティーノが長らく働いていたレンタルビデオ屋がモデルで、ランスという店主の名前まで同じ。もちろん自分の誕生日にソニー千葉(千葉真一)のカラテ映画三本立てを観に行くクラレンスの姿もタランティーノそのものと言える。


 とはいえタランティーノが実際に可愛い娼婦と恋に落ちて逃避行をしたわけではない。『トゥルー・ロマンス』の物語は「このシケた暮らしからおさらばしたい」と願う若者が見る白昼夢のようなもの。その夢が、一流監督と最高の豪華なキャストによって最高に面白い映画という実体を得た。その事実にわれわれ映画ファンは感動し、クラレンスとアラバマをまるで自分自身か親しい友人のように身近に感じ、トニー・スコットと同様「クラレンスを殺したくない!」と思うほどに大好きにならずにいられないのである。



文: 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。



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