2017.10.04
水原希子と、安藤サクラのどちらが真の悪女か?
さて、コーロキを狂わせるのは、女性ファッションブランドのプレス、あかりである。初対面はキャピキャピしたハイテンションと笑顔でコーロキを一目惚れで一撃させ、とはいえ、仕事に関しては強烈に押しキャラで、ブランド側の要求は鬼のような厳しさで注文を。コーロキが注文通りの仕切りをしていないことを知るとなると、容赦なく叱りつける。ただのぶりっ子じゃないところが手ごわくて、なかなか連絡が取れないことにコーロキがイラつくと、「おこる人は嫌い」と一蹴。媚のないところが、男にとっては手ごわいのである。
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(C)2017「民生ボーイと狂わせガール」製作委員会
SNSなどの感想を見ると、あかりというキャラクターへの評価は賛否両論真っ二つであるが、みなさん、それ以上に悪女がこの映画に出てくることをお忘れでは。
そう、安藤サクラ演じる人気コラムニスト、美上ゆう。
猛烈に面白い原稿をあげてくるのだけれど、毎回、締め切りがぎりぎりで、編集者の胃をきりきりさせる。本人に悪意がないのがまた困ったもので、条件がそろわないと、原稿が書けないのである。だからといって、締め切りはきっちりと守るけれど、面白くない文章を載せるわけにはいかない。編集者はこの二択で常に胸が切り裂けられる運命にあるのだが、コーロキもあかりとの一泊旅行を、ゆうの遅延のせいでさんざんに振り回されることに。試写の後、多くのライターが我が身の悪行について振り返り、頭の中で反省したに違いない。
だが、渋谷直角の原作も、大根仁の映画も、ゆうというキャラクターを決して否定したり、非難しない。むしろ、編集長が非難するのは、スケジュール通りに原稿を仕上げるようにサポートしないコーロキの方なのである。それはモノをゼロから作り出す人間へのリスペクト。大根仁の映画は、「仕事をする人」への讃歌に満ちていて、多くの働く人にカツをいれてくれるのである。
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」「装苑」「ケトル」「母の友」など多くの媒体で執筆中。著書に映画における少女性と暴力性について考察した『ブロークン・ガール』(フィルムアート社)がある。『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)、『アジア映画の森 新世紀の映画地図』(作品社)などにも寄稿。ロングインタビュー・構成を担当した『アクターズ・ファイル 妻夫木聡』、『アクターズ・ファイル永瀬正敏』(共にキネマ旬報社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワネットワーク)などがある。
公式サイト : https://www.toho.co.jp/movie/lineup/tamioboy.html
(C)2017「民生ボーイと狂わせガール」製作委員会
※2017年10月記事掲載時の情報です。