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『SUNNY 強い気持ち・強い愛』オリジナル徹底比較・時代背景篇――「1990年代半ばのティーンたち」を描く理由

(C)2018「SUNNY」製作委員会

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』オリジナル徹底比較・時代背景篇――「1990年代半ばのティーンたち」を描く理由

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『SUNNY 強い気持ち・強い愛』あらすじ

日本中の女子高生がルーズソックスを履き、空前のコギャルブームに沸いた90年代、そんな時代に青春を謳歌した女子高校生の仲良しグループ「サニー」のメンバー6人は、22年の時を経てそれぞれ問題を抱える大人になっていた。専業主婦の奈美は、ある日、久しぶりにかつての親友・芹香と再会するが、彼女は末期ガンに冒されていた…。「死ぬ前にもう一度だけ、みんなに会いたい」。芹香の願いを叶えるため、奈美が動き出す。裕子、心、梅、そして奈々…、かつての仲間は無事、芹香の前に再集結できるのか?夢と刺激で溢れていた高校時代と、かつての輝きを失った現在の二つの時代が交差して紡がれる物語は、ラスト、“強い気持ち”と“強い愛”によって、予想もしていなかった感動を巻き起こす!!


Index


韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』の社会背景



 めっちゃ楽しい! まさに“元気チャージ”系の快作『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は、大根仁監督&川村元気プロデューサーの黄金タッグの新作。『モテキ』(2011年)『バクマン。』(2015年)に続く、おそらく彼らの作品の中で最も間口の広い作風の第三弾だ。 周知のとおり、これは名作として知られる2011年の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(監督:カン・ヒョンチル)のリメイク。ただし表面的な日本版ではまったくない。構造自体を日本の社会、文化、歴史に合わせて高精度に変換した、非常に優れたカバーバージョンである。


 ではオリジナル韓国版から、東宝の日本映画への、最大の変換ポイントはどこか?それは時代背景。倦怠気味にあるヒロインの主婦が旧友に再会してから、キラキラ輝いていた女子高生時代を想い出す――というお話の大枠は同じだが、韓国版では全編の約半分を占める回想パートが1980年代半ばとなる。



『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(C)2018「SUNNY」製作委員会


 社会背景として押さえておきたいのは、チョン・ドゥファン大統領の在任期を中心に起こった光州事件以降の民主化運動の流れ。元々ゴリゴリの軍人出身で、ヴェトナム戦争にも従軍したチョン・ドゥファンは、政権を掌握するために軍事クーデターを起こす。これに抗議するために学生や市民が立ち上がり、大規模なデモに展開したのが1980年5月の光州事件だ。しかしこの民衆蜂起を韓国政府は武力で徹底弾圧。当時の政府・軍部がいかに残虐で凄惨な鎮圧作戦を繰り広げたかは、今年日本公開された『タクシー運転手~約束は海を越えて~』(2017年/監督:チャン・フン)などでも描かれた。この歴史的な暴動を経て同年8月にチョン・ドゥファンは大統領に就任する。


 もちろん反軍政・民主化要求のデモは以降も地道に続く。韓国においては1980年代が、例えば日本で学生運動が先鋭化して盛り上がった1960年代から1970年代初頭に当たる「政治の季節」なのだ。韓国には「386世代」という言葉があって、これは1980年代の民主化運動の時にデモに参加していた世代を指す(1990年代に“韓国の次代を担うニュー・ジェネレーション”とされた当時30代で、1980年代には政治意識の高い大学生だった1960年代生まれの人たちという意味)。


 こうして1987年には反政府運動の高まりがピークに達して、翌年(88年)に控えたソウルオリンピック開催に際しての混乱の回避も見据えつつ、87年6月29日にはノ・テウ大統領候補による「民主化宣言」が発表される。


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