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『ミクロキッズ』の小さな大冒険【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.42】

『ミクロキッズ』の小さな大冒険【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.42】

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大きくなったりまた縮んだりする続編





 『ジャイアント・ベビー』の邦題で知られる第2作目の原題は『Honey, I Blew Up the Kid』。タイトル通り今度は大きくしてしまうということで、前作から3年後、新たに生まれた末っ子アダムが前作の縮小装置からの発展で作られた拡大装置の光線を間違って浴びてしまい、巨大化してしまう。ところでアダムはすでに2歳で多少言葉を話すこともできるので(もちろんまだまだ意思疎通が十分にできないからこそ、騒動が大きくなっていくのだが)、巨大化しなくとも『ベビー』と言うには少し大きい。


 電磁波を浴びるたびに少しずつ巨大化していくアダムだが、前半ではまだちょっとした大男くらいの大きさで、部屋の中でほかの家族と並ぶシーンなどにおもしろさがある。後ろ向きで顔が見えないところは、髪や衣装を身につけた高身長のスーツアクターが演じたり人形を用いるなど、実体と合成をうまく合わせて違和感のない映像に仕上げている。父親を抱きしめて持ち上げてしまうシーンも、かつらと衣装でアダムに見せかけた人がモラニスを抱き上げているだけなのだが、よく出来ている。


 見どころはやはりクライマックス、ビルほどの大きさになったアダムがニコニコしながらラス・ベガスのネオン街を歩くシーンだろう。劇中でも言及されるように怪獣映画さながらの絵面で、天使のようなクルクルのブロンドヘアに無邪気な笑顔の子どもに人々が逃げ惑う。黄色いトレーナーに赤いオーバーオールがカジノのネオンの中でよく映えている。巨大化に成功したサンプルとしてアダムを狙うライバル科学者の追跡もあってテンポもいいが、攻撃を受けたアダムがついに泣き出すところは、それまで無邪気に笑ってはしゃいでばかりだったこともあって思わず胸を打たれる。思えば一番怖い思いをしていたのはアダムだったのかもしれないよな……なんてことを思っていると、そこへマーシャ・ストラスマン扮する母ダイアンが夫の装置により巨大化して現れ、悪役の乗ったヘリコプターを追い払い巨大な息子を抱きしめて安心させる。大胆な展開かもしれないが決してバカにはできない。その場しのぎのオモチャではなく、愛に満ちた抱擁にこそ小さな子どもは安堵できるのだ。どれだけ大きくなっても終始かわいらしいアダムだが、ちょうどうちの子どもももうすぐ2歳になろうというところなので、余計に感情移入してしまう。


 続いて第3作目は『ミクロキッズ3』、原題は『Honey, We Shrunk Ourselves』。「ハニー、僕ら自分たちを縮めちゃった」ということで、今度はとうとう大人たちが手違いで縮小されてしまう。なので邦題とは裏腹に全然ミクロなキッズのお話ではないのだが、小さくなったサリンスキー夫妻とウェインの弟夫妻の4人が家の中を冒険する間、大人不在(のように見える)の家で子どもたちだけの世界が繰り広げられるといった構造。大人たちは「巨大な世界」に苦戦しながらも、自分たちが知らなかった子どもたちの一面や思っていたよりも成長しているところを目の当たりにし、彼らへの態度を考え直すことになる。サリンスキー家ではエミーに続いてニックも家を出ており、今回は前作から成長したアダムがキッズのメインを張る。


 ここへ来てビデオスルー作品であり、前作が巨大化のお話だったこともあり内容的にも特殊効果的にも若干スケールダウンしているような印象が否めないが、前述のように芯となるストーリーがなかなか安定していると思う。当初は1996年に劇場公開される予定だったが、当時ディズニーのアニメ作品で定番となり成功していたビデオによる続編リリースを、実写作品でもということでビデオスルーとなったようだ。大人たちがシャボン玉の中に入って安全に階下へと降下していくシーンは、前作の巨大化した子どもと大人たちとの合成などを思い出すとやや嘘っぽく見えるなど、CG黎明期ならではの実験的な雰囲気が漂うものの、それでもアダムの部屋にあるホットウィールのコースを、大人たちが滑走するシーンは勢いもあって見応えがある。ちなみにここで一行はサメ型のミニカーであるシャークルーザーに4人揃って乗り込むのだが、実際のシャークルーザーには劇中のように4人も乗れる家庭的な座席はついていない。縮小されるのがほかでもないウェイン自身なので、子どもたちに事態を伝えて元の大きさに戻る方法などをわりと簡単に思いつくのだが、その代わりドラマの焦点は親のいない間に問題に対処する子どもたちの方に当てられている。


 小さくなったり大きくなったり、また小さくなったりと、少しクラッとくるようなサイズ差がマジックを生む『ミクロキッズ』シリーズ。続編であれリブートであれ、今の映像であの世界が見られるのなら、とても楽しみだ。なにより一貫してウェイン・サリンスキーを演じたリック・モラニスの復帰がうれしい。コミカルさと知性を兼ね備え、とぼけながらもすごいものを作ってしまう典型的な発明家であると同時に、子どもたちを救い出そうと、芝生をしらみつぶしに探し回る健気な父親でもある魅力的なキャラクターを、再び見せてくれるのだろうか?



イラスト・文:川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。 

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