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『ミクロキッズ』の小さな大冒険【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.42】

『ミクロキッズ』の小さな大冒険【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.42】

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庭を渡って家を目指すだけの冒険



 リック・モラニスが『ミクロキッズ』の新作で俳優業復帰と報じられたので、前回はモラニス出演作で個人的にお気に入りの『スペースボール』を紹介したが、今回は当の『ミクロキッズ』とそのシリーズについて。子どもの頃に観たきりで、1作目と2作目の断片的なイメージがあるだけに過ぎなかったが、改めて3本まとめて観てみると、小さくなったり大きくなったり、そしてまた小さくなったりとなかなか起伏があっておもしろい。『ミクロキッズ』というのは実は邦題で、第1作目の原題は『Honey, I Shrunk The Kids』、「ハニー、子どもたちを縮めちゃった」といったところ。シリーズを通してタイトルの主語は常にモラニス扮する科学者ウェイン・サリンスキーで、要するにこのひとが自らの発明品を通してやらかし続ける。


 物質縮小の研究とそれを実現する装置の開発に長年取り組んできたウェイン・サリンスキーは、あと一歩というところでなかなか難所をクリアできず、夢想的な研究のため大学でも笑いものにされていた。しかし、彼の留守中に子どもたちによるアクシデントで偶然にも装置が正しく作動し、ウェインの娘エミーと息子ニック、そしてお隣トンプソン家の兄弟ラスとロンの4人が極小サイズに縮められてしまう。子どもたちが戸惑っているところへ、大学で大恥をかいてきたばかりのウェインが帰宅するが、全く成果の出ない研究に苛立って装置を破壊した上、子どもたちが紛れているのも知らずに残骸をゴミ袋に詰めて庭先に出してしまうのだった。なんとかゴミ袋から脱出した子どもたちだったが、家に戻ってウェインに助けを求めるには、鬱蒼としたジャングルと化した庭を越えていかなければならなかった……。


 監督はこれがデビュー作となったジョー・ジョンストン。『スター・ウォーズ』オリジナル三部作の著名な特殊効果スタッフのひとりで、メカニックやキャラクターのデザインにおいて大きな役割を果たしているほか、コンセプト・アーティストのラルフ・マクォーリーとともに賞金稼ぎボバ・フェットのデザインに取り組み、衣装を制作した張本人でもある。帝国軍の地上兵器AT-ATや、ジェダイ・マスター・ヨーダのイメージスケッチなども印象的で、絵のタッチも素晴らしい。『ミクロキッズ』の企画には監督の交代による後からの参加で、画面にもそれほど印象的なガジェットが登場するわけではないが、巨大な庭で子どもたちが遭遇する馬よりも大きなアリや、飛来する働きバチなどの特撮要素はやはり出来がよく、実在の大掛かりなセットによって「もしも小さくなったらこんな感じ」という視線がよく表現されている。次から次へと危険が降りかかる恐ろしい密林も、実はただ手入れをせず伸び放題となった芝生に過ぎないというスケールのギミックなどが手伝い、後の『ジュマンジ』にも通じそうなジョンストン作品らしい冒険活劇となっていると思う。



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