新海誠監督作品まとめ(2007~2013)
3.『秒速5センチメートル』(07)63分
新海監督が、大きく飛躍する契機となった作品。短編3本の連作となっており、ある男女が子どもから大人になり、関係性が変容していくさまをつづっていく。
互いに意識しあっていた、小学生の男女。しかし、それぞれの転校が重なり、想いだけが変わらぬまま、2人は引き裂かれてしまう。中学、高校、社会人と成長していくなかで、男女の歩む道は、はっきりと分かれていくのだが――。
本作で顕著な、詩的で内省的なモノローグは、新海監督の真骨頂。作品を経るごとに洗練され、最新作に至るまで受け継がれている。また、公開時には、美しくも儚いラストシーンが、様々な評を集めた。
作品を彩る、山崎まさよしの名曲「One more time, One more chance」も、耳に残る。
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4.『星を追う子ども』(11)116分
本作を境に、新海監督の描く世界がマイナーチェンジを遂げる、ターニングポイント的な一作。田舎と異界、不思議な石、地下世界といったモチーフ、キャラクターデザインに至るまで、ジブリ作品的な要素が多く見られる。
本作では「死」が男女を分かつ表現として描かれており、父や友人を亡くした少女が、地下世界への冒険を通して、死や喪失を実感していく姿に「心の成長」が重ねられている。
新海監督の作品には日本の伝統的な伝承や風土の「におい」が強く感じられるが、本作においてはクリーチャーやガジェット、衣装や、新海作品には珍しいバトルシーンなども含め、むしろ海外のファンタジー的なエッセンスが色濃く生きている印象だ。そういった側面から見ても、少々毛色の違う作品だろう。
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5.『言の葉の庭』(13)46分
東京の新宿御苑を舞台に、雨の日にだけ会える男女の心の触れ合いを繊細に見つめた傑作。本作から最新作の『天気の子』までは世界観を共有しており、本作をもって、新海ワールドは新たなフェーズに入ったといえよう。
靴職人を目指す男子高校生と、ある秘密を抱えた年上の女性。社会に居場所を見いだせない2人は、雨の日に新宿御苑で語り合うことで、鬱屈した想いや胸に漂う孤独を癒していく。
社会と個人の相容れなさ、「雨」が「救済」の意味を持つポジショニングなど、『天気の子』との共通性がそこかしこに潜んでおり、新宿の描写やカメラワーク、和歌に象徴される伝統への敬意からは、『君の名は。』との関連性も感じられる。
息をのむほどに美しい風景描写、クライマックスのエモーショナルな雨の演出と音楽の使い方など、新海監督の感性が突出した作品だ。
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