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『天気の子』にみる『君の名は。』との際立つ相違点!作家としての意志が脈打つ挑戦作

(C)2019「天気の子」製作委員会

『天気の子』にみる『君の名は。』との際立つ相違点!作家としての意志が脈打つ挑戦作

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※2019年7月記事掲載時の情報です。

※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『天気の子』あらすじ

「あの光の中に、行ってみたかった」高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。彼女には、不思議な能力があった。「ねぇ、今から晴れるよ」少しずつ雨が止み、美しく光り出す街並み。それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった——


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「集大成」の真逆を行く「野心作」



それは、曇天を分かつ一条の陽光のように。

或いは、乾いた大地を潤す雨粒のように。

無限に、心に降り注ぐ。


 『君の名は。』(16)の新海誠監督が約3年ぶりに放った『天気の子』は、2019年一番の注目作だったといっていいだろう。『君の名は。』は歴代4位となる国内興行収入250億円超の大ヒットで社会現象を巻き起こし、『(500)日のサマー』(09)のマーク・ウェブ監督によるハリウッドリメイクも決定。その作り手の新作ということで、世界規模で期待を浴びていた。然して眼前に現れたのは、新海監督の「進化」と作家としての「信念」を強く感じさせる、野心むき出しの挑戦作だった。


 『天気の子』は、家出少年と不思議な少女の交流を描いたラブストーリーだ。親元を飛び出し、東京で生活を始めた高校生・帆高が、「100%の晴れ女」陽菜と出会い、壮大な運命の渦に巻き込まれていく。


『天気の子』あらすじ


 本作で原作・脚本・監督を担当した新海誠は、元々監督・脚本はもちろん撮影や編集・絵コンテ・音響・CGまでも1人で行うマルチクリエイター。一瞬で目を奪われる美しい風景描写、内向的でポエティックな台詞、男女の距離を繊細に描くストーリー等で高い人気を誇り、これまでに本作を含む計7本の劇場公開作品を世に送り出してきた。


ほしのこえ』(02)

雲のむこう、約束の場所』(04)

秒速5センチメートル』(07)

星を追う子ども』(11)

言の葉の庭』(13)

君の名は。』(16)

『天気の子』(19)


 タイトルを追っていくと、「星」「雲」「庭」「天気」と自然を連想させる言葉が多く使われていることがわかる。新海監督の作品群にはいくつか共通するモチーフがあり、代表的なものを挙げるなら「自然」と「伝統」、そして「孤独」と「隔絶」だ。これらは、『天気の子』を構成する骨格でもある。


 アイデンティティを探す少年と能力者の少女の恋愛という設定も、『君の名は。』と同じ。このように、本作は新海監督の作品に流れる遺伝子を受け継ぎながら、決して「集大成」ではない。むしろ『君の名は。』へのカウンターといえるほど挑戦の連続であり、新海監督の作家としての自負が色濃く反映されている。しっかり泣かせてくれる壮大なエンターテインメントではあるのだが、その奥では、自分らしさを取り戻そうとする「宣誓」のような強いメッセージが、どくどくと脈打っている。



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