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『(500)日のサマ—』こだわりのロケ地から見えてくる、映画の都ロサンゼルスの新たな顔
2017.08.19
『(500)日のサマ—』あらすじ
グリーティングカードの会社に勤める建築家志望のライター、トム・ハンセン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は音楽好きな草食系男子。1日目、ボスのアシスタントとして入社したサマー・フィンリー(ズーイー・デシャネル)にひと目惚れする。4日目、エレベーターの中でトムのヘッドフォンから漏れる曲をサマーが聴いたことから、二人は会話を交わすようになっていく。28日目、カラオケの席でトムはサマーに彼氏がいないことを知る。「恋人なんて欲しくない」という彼女と、友達としてつき合い始める。34日目、二人はIKEAの展示している家具で「新婚ごっこ」を楽しむ。盛り上がるトムに対しサマーは「真剣につき合う気はない」と言い、トムも思わず「気楽な関係でいいよ」と答えてしまう。109日目、サマーが初めてトムを自分の部屋に招き入れ、一気に関係が進展すると思われたのだが…。
Index
LAはダウンタウンこそが魅力的?
ニューヨークならエンパイア・ステート・ビルやタイムズスクエア。ロンドンならビッグベンにバッキンガム宮殿。パリはエッフェル塔と凱旋門。モスクワなら赤の広場……と、有名なシンボルを映すことで、その都市で起きるストーリーだと観客に伝える。これは映画の常套手段だ。
その一方で、有名な土地を舞台にしながらも、そこがどこなのかよくわからない。典型的なスポットは意識的に映像から回避することで、ストーリーそのものに没入させようとする作品もたくさんある。
『(500)日のサマ—』の舞台となるのは、ロサンゼルス(LA)である。LAといえば、きらめく陽光が降り注ぐサンタモニカのビーチや、観光客でにぎわうハリウッド大通り、ビバリーヒルズの高級住宅地、そして山の中腹に掲げられた「HOLLYWOOD」のサインなどが、たびたび映画に出てくる。しかし『(500)日のサマ—』には、そのようなランドマークは一切登場しない。ダウンタウンが撮影で多く使われており、一般的なLAのイメージからはかけ離れた風景が、主人公たち、トムとサマーの恋の運命をいろどるのだ。
そのダウンタウンを、トムとサマーが小高い丘のベンチから望むシーンが、映画の冒頭とクライマックスに挿入される。トムのお気に入りの場所で、二人の思い出となったその丘は、「エンジェルス・ノール」という公園。運行距離(約90m)で世界最短鉄道といわれるケーブルカー「エンジェルズ・フライト」に乗って登る丘(もちろん徒歩でも可能)だ。遠くにパームツリーも見えるので、なんとなくアメリカ西海岸だと想像できるが、ぱっと見からは従来のLAのイメージとは程遠い。そんな、どこにでもありそうな風景を使うことで、そこに生活している人のリアルな感覚が出せるかもしれない。作り手たちの意図が伝わってくるロケーションだ。