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『(500)日のサマー』ブルーは恋と幸せ。セリフ以上にテーマを示す、映画における「色」の意味とは
2017.08.19
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赤やブルー、黄色は作品のポイントになりやすい
監督がこだわった「色」が強調される映画がある。
たとえばスティーブン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』。ラスト以外、基本はモノクロ映画のこの作品でなぜ色のこだわりが……と思うかもしれない。突如、「色」が出てくる瞬間があるのだ(このパートカラーの手法は、それ以前にも黒澤明監督の『天国と地獄』で使われていた)。ロウソクの炎と、ユダヤ人少女のコート。その2ヶ所が赤く着色されている。スピルバーグが「赤」に込めた思いは、観る人それぞれの想像力を刺激する。戦争の中の命の象徴なのか。それとも純粋さの表現なのか。
名匠、小津安二郎監督もカラーで撮るようになってからは、必ず赤い小道具(ヤカンなど)をアクセントとして画面に収めることが習慣になっていた。小津の場合は、赤という色にテーマを託すというより、あくまでも映像としてのバランス感を考えた結果だ。
この「色」が近年、有名になったのは、「キタノブルー」。北野武監督がそのキャリアの初期に多用した、青みがかった画面の色調、青い小道具などなど。『あの夏、いちばん静かな海』のラストシーンで、雨に濡れたコンクリートの沈んだブルーに着想を得て、『ソナチネ』ではブルーを意識した表現に挑んだ北野監督。同作には他の色も多く使われているのだが、全体的にブルーが際立つのである。
ブルーといえば、アカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』では、作品内の3つのパートのうち、最初の少年時代で青みを強調した映像が多用される。主人公の黒い肌がブルーの光の下で色調を変えること、すなわち人間の肌の色や嗜好は見る側の意識の問題だ、というテーマが追求されていた。
また、作品ごとに強烈に色にこだわる監督といえば、ウエス・アンダーソンがいる。『グランド・ブダペスト・ホテル』ではピンク(お菓子の箱)や黄色(ホテルのレセプション)とカラーを強調する作風は、初期の『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(赤いジャージや黄色のテントなど)から延々と続いている。