(C)2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『(500)日のサマー』ブルーは恋と幸せ。セリフ以上にテーマを示す、映画における「色」の意味とは
2017.08.19
限定的に使われる色こそが、重要な象徴に!?
「幸せのブルー」が最も印象的なのは、突然、実写に合成されるアニメーションだろう。サマーとの恋がうまくいきそうになって、幸せの絶頂にあるトムが喜びのあまり、ミュージカルのように歌い、ステップを踏むシーン。そこにアニメで登場するのが、青い鳥だ。メーテルリンクの童話「青い鳥」では幸せの象徴であり、またディズニーアニメ『南部の唄』の名曲「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」には「Mr. Blue Bird on My Shoulder」という歌詞で幸せな一日が表現されていた。『南部の唄』も実写とアニメの合成。『(500)日のサマ—』では青い鳥がトムの肩に止まり、同作へのオマージュとなっている。このシーンは、トムのまわりで踊る人やブラスバンドもブルー系の衣装だ。
基本的にブルーが暗示するのは、サマーという女性の存在と、その彼女との幸せな時間。というわけで『(500)日のサマ—』では、「赤」の使われ方が限定されている。サマーの部屋には青い折り鶴がモビールとして吊るされていたが、赤い折り鶴が出てくるシーンがある。それが意味するのは……失われた大切な何かではないか。そして映画のクライマックスで、意味ありげに「赤」が登場する。すでに今作を観た人は納得の「赤」だろうし、これから観る人は、その「赤」が何を意味するのか楽しみにしてほしい。それほどまで観る者の潜在意識を刺激するかのように、この作品には象徴としての色が使われている。
色についていえば、「○日目」という時制の背景に出てくる絵の色調もさまざま。トムとサマーの関係がうまくいっている日は明るい色で、ぎくしゃくしている日は暗い色。その濃淡によって、彼らの関係性が予告されているのが面白い。このように、作り手が「色」に込めた思いを受け取りながら映像に接することで、より一層、登場人物たちの秘めた思いや、作品のテーマに近づいていけるのではないか。
文: 斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO!シアター」では最新公開作品を紹介。
(500)日のサマー 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
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※2017年8月記事掲載時の情報です。