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『天気の子』にみる『君の名は。』との際立つ相違点!作家としての意志が脈打つ挑戦作

『天気の子』にみる『君の名は。』との際立つ相違点!作家としての意志が脈打つ挑戦作


善意で出来た『君の名は。』、悪意に晒された『天気の子』



 これまでも述べてきたように、『君の名は。』と『天気の子』には多くの類似点がある。それ故に、相違点が際立ってくる。『君の名は。』を比較対象に挙げた際の本作の「差異」は、そのままこの映画が伝えようとする意志と言い換えられる。


 『君の名は。』と本作の主人公は、共に「世界の危機」に直面する。しかし、その事件に対する行動の仕方が、両者は全く異なっている。ここで効いてくるのが、先に書いた両作品の「世界」の描かれ方の違いだ。


 善意と悪意、どちらにより多く接してきたか。それによって、人の行動は変わる。どちらが正解でどちらが間違いというものではなく、自分の想いのままに行動した結果だ。それでいいのだ、と本作は教えてくれる。このようなメッセージを伝えられるのは間違いなく『君の名は。』という王道があったからで、この作品を経たからこそカウンター的な邪道の物語、汚れや不健全にまみれながらも生きていこうとする魂を強く、強く表現する道が照らされたといえるだろう。


 自分本位でいい。本当に大切にしたいものだけを抱きしめていい。許しも何も必要ない。「隔絶」の被害者たちをずっと描いてきた新海監督は、本作でついに「加害者」の領域に手をかけた。この物語は、様々な場所で賛否を呼ぶだろう。だが、それでいいのだ。映画というのは道徳や倫理を描くものではないのだから。本作を鑑賞した観客は、新海監督のストーリーテラーとしての気骨を目撃するだろう。




 余談だが、『言の葉の庭』で雨を「男女をつなぎとめるもの」として描いた新海監督が、本作で晴れを肯定することに対して、観る前は違和感があった。しかし、それは杞憂だった。『天気の子』の劇中では、みんなが「晴れ」を望んでいる。ただ1人を除いて。多数決の原理でいうなら、正解は決まっている。だが、愛が絡めば話は別だ。運命の人は、たった1人しかいないのだから。その相手が望めば、世界の常識なんて一瞬で消える。


 世界を守ろうとする『君の名は。』。世界を変えようとする『天気の子』。


 本作は、王道を歩いてこなかった新海監督の本流に立ち返る、確信犯的な問題作だ。だからこそ、この映画が描く愛は、この上なく汚れていて、途方もなく美しい。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライターに。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」等に寄稿。Twitter「syocinema」



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作品情報を見る


『天気の子』

2019年7月19日 全国東宝系にてロードショー

公式サイト: https://www.tenkinoko.com/

(C)2019「天気の子」製作委員会


※2019年7月記事掲載時の情報です。

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