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自らの「世界」を開拓し続ける表現者、新海誠監督作品まとめ

(C)2019「天気の子」製作委員会

自らの「世界」を開拓し続ける表現者、新海誠監督作品まとめ

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新海誠監督作品まとめ(2016~2019)





6.『君の名は。』(16)107分


日本映画史上、歴代2位の興行収入を樹立した歴史的一作(海外作品を入れると4位)。新海監督がビッグバジェットでの製作に臨んだ作品であり、キャラクターデザインに『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(11)の田中将賀、主題歌と音楽にRADWIMPS、声の出演に神木隆之介、上白石萌音、市原悦子、成田凌、長澤まさみといった豪華な俳優陣をそろえた。


「入れ替わり」を題材にした高校生のラブコメディという、新海監督の新境地で始まり、中盤からはこれまでの作品に通じる「男女の分断」という設定が、大きく躍動していく。観る者の予想を裏切る秀逸な仕掛けが施されたストーリーは、観客の間で語り草となった。


これまでの新海作品は、自身の内側に向けたようなモノローグが特徴的だった。しかし本作ではダイアログが増え、男女間のコミュニケーションが活性化。とはいえ、ここぞというシーンではおなじみの圧倒的な画面の美しさと、エモーショナルなセリフで魅せる。メジャー大作用にエンターテインメント感を補完しつつも、自身の作家性を巧みに共存させるあたり、新海監督の“上手さ”が光る。




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7.『天気の子』(19)114分


『君の名は。』が真っ当な優等生的映画だとしたら、『天気の子』はメジャー映画の枠でタブーに果敢に挑んだ、実に野心的なアウトロー映画だ。雨が降り続く東京を舞台に、不思議な力を手にした「晴れ女」と家出少年の逃避行を描くストーリーだが、格差・暴力・性風俗・権力・犯罪といった題材が、大量に仕込まれている。


本作で注目すべきは、「美しさ」を信条としてきた新海作品に、明確な「汚し」が入り込んできていること。ゴミだらけの裏路地や廃ビル、半地下の事務所に明け方のファストフード店など、都会の暗がりを意図的に描いている。『君の名は。』から基本的なスタッフ陣は踏襲しているが、物語のベクトルは真逆と言っていいだろう(それでもきっちりと国内興収100億円を突破させるのは、さすがとしか言いようがない)。


主人公がとる行動も、拳銃を所持する、線路を走る、未成年だがラブホテルに入るといった、法律&倫理的にはアウトな部分が多く、「晴れ女」の能力を有した少女が大衆に消費されるという展開も、かなりシニカルだ。しかし、それがゆえに「愛のために世に背く」テーマが浮き彫りに。「映画は“正論”を描く必要はない」というメッセージが、胸に響く。




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大体3年に1本ペースで、新作を発表してきた新海監督。興味深いのは、作品ごとに進化を遂げてはいるが、自身の「芯」はブラさないところだ。「引き裂かれる男女」に象徴されるような、全作品に共通したエッセンスは、今後も受け継がれていくことだろう。


新海監督は、借り物ではなく自分の目と心で物語を紡ぐ「作家」であり、多くの偉大な芸術家がそうであるように、自らの「世界」を開拓し続ける者。ゆえに、その“深度”は今後もなお一層、増していくに違いない。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema

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