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CG化されたカートゥーンとしての『モンスター・ホテル』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.47】

CG化されたカートゥーンとしての『モンスター・ホテル』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.47】

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怪物たちの狂宴





 モンスターたちが大集合して大騒ぎというところで思い出されるのは、ランキン/バス・プロダクションによるストップモーションアニメ「マッド・モンスター・パーティ」(「怪物たちの狂宴」とも)だ。ボリス・カーロフが声をあてるカーロフそっくりなボリス・フォン・フランケンシュタイン博士が、悪の島にある自分の屋敷にやはり有名なモンスターたちを招待してひと騒動起こるお話で、招かれてくるモンスターたちもドラキュラ、ミイラ、狼男、透明人間、半魚人、ジキル博士(とハイド氏)、カジモド(彼をモンスターと呼んでいいのかわからないが……)といった面々で、もちろん全て『モンスター・ホテル』にも登場する。


 またフランケンシュタイン博士の甥が狂言回しとして登場するが、ただひとり普通の人間がモンスターたちの中に巻き込まれるという筋書きも一致し、強い影響を受けているのは明らかだろう。フランケンシュタイン博士の召使いたちがゾンビだが、『モンスター・ホテル』でもポーターたちがゾンビである。


 こちらのモンスターたちの造形も本当にかわいらしく、アイコニックなフランケンシュタインの怪物はもちろんのこと、フランケンシュタイン博士の造形もポップなところがいい。これほど魅力的なストップモーションアニメでありながら、(多少はあるものの)フィギュア等のグッズが少ないのが残念でならない(個人的には人形アニメのキャラクターこそどんどんフィギュア化するべきだと思っている)。



 雑誌「マッド」などで知られる漫画家のジャック・デイヴィスがデザインしたこの怪物たちに命を吹きこんたのは、日本の人形アニメ作家の持永只仁率いるMOMプロダクション。MOMはランキン/バスからの依頼でアメリカ向けの人形アニメをいくつも作っており、中でも代表的な「ルドルフ 赤鼻のトナカイ」はティム・バートンを魅了し、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のインスピレーション元のひとつにもなったという(濃霧の中を幽霊犬が光る鼻で照らし出すくだりがしっかり挿入される)。


 ポップにアレンジされたモンスターたちは『モンスター・ホテル』でも健在だが、中でもお気に入りなのは透明人間のグリフィンだ。「マッド・モンスター・パーティ」ではユニバーサル映画版をモチーフに、ナイトガウンを着てトルコ帽を被った姿で描写されていたが、こちらではただ単に眼鏡がひとつ宙に浮かんでいるだけという非常にシンプルな形で表現されている。


 要するに裸に眼鏡なのでそこも可笑しいのだが、眼鏡の動きや、変形するフレームで表情を見せているところがおもしろい。こうしてお馴染みのモンスターの様々なバージョンを見せられると、自分もそれを描きたくなってくる。


 新しいフォーマットにおいても古典的なやり方を活かすという姿勢と、古典的なモンスターを新たな形で見せようとするコンセプトがうまく重なり合っている『モンスター・ホテル』は、すっかり主流となった3DCGアニメ作品の中でもお気に入りのひとつ。そうして、子どもの頃から観ていたカートゥーンの作り手でもあったゲンディ・タルタコフスキーは、憧れのクリエイターのひとりである。



イラスト・文:川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。 

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