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CG化されたカートゥーンとしての『モンスター・ホテル』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.47】

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ホテルとなったドラキュラ城



 誰もがすぐに頭に思い浮かぶほど有名な古典的モンスターたちが、一同に会して大騒ぎの『モンスター・ホテル』。原題は『Hotel Transylvania』で、東欧はトランシルヴァニアにある吸血鬼ドラキュラ伯爵の城をそのままモンスター向けの高級ホテルという設定にしたお話。原題のほうがひねりがあってかっこいいのだが、『モンスター・ホテル』もストレートでわかりやすいと思う。


 19世期末、人間たちの迫害により妻を失ったドラキュラ伯爵は、幼いひとり娘のメレディスと、そして仲間のモンスターたちを守るために彼らにとって安全な場所としてホテルを建造する。時は流れてメレディスの118歳の誕生日。お祝いのために大勢のモンスターたちがホテルに招待され、伯爵は仲間たちとの再会を喜ぶが、偶然にも山中で道に迷いホテルにたどりついてしまったバックパッカーの青年ジョニーが現れたから一大事。


 人間禁制のモンスターの楽園という触れ込みのホテルにとって、人間を入れてしまったと知られれば信用に関わる。伯爵は必死にジョニーが人間であることを隠してモンスターのフリをさせた上、追い出そうと努めるが、そうこうするうちに外の世界(とりわけ人間の世界)に好奇心を抱くメレディスは、(外見上は)同年代のジョニーと惹かれあってしまい、かのドラキュラ伯爵はひとりの父親としてやきもきすることに……。



 というようにストーリー自体はドタバタな作品なのだが、古典モンスターへの愛に満ちており、造形やパロディが楽しい。ホテルに迷い込んでしまう青年ジョニーは本名はジョナサンだが、これは「吸血鬼ドラキュラ」の原作における最初の語り手ジョナサン・ハーカーの引用だろう。


 ジョナサン・ハーカーはロンドンに屋敷を買いたいというドラキュラ伯爵の依頼でトランシルヴァニアの古城に派遣された事務弁護士であり、城に滞在しているうちにその主人のおぞましい正体を知ることになる。事務弁護士のジョナサンは吸血鬼の恐怖によって衰弱してしまうが、バックパッカーのジョニーは伯爵をパニックに陥れるばかりか、ドラキュラお得意の催眠術もコンタクトレンズによって回避してしまう。


 ホテルや娘の一大事に奔走するドラキュラは、これまで数多あるドラキュラパロディの中でも最高に愛嬌たっぷりでかわいらしくさえある。外見は至ってシンプルで王道なベラ・ルゴシスタイル(ぺったり撫で付けた黒髪にとがった鼻、黒ずくめの夜会服)で、ひねりのなさに一見平凡さも感じるが、そのわかりやすいデザインが本作のドラキュラのキャラクターを際立たせていると思う。実際ほとんどドラキュラのキャラは、特に顔芸でもっているところが否めない。デザイン案には全く違う独自性の強いドラキュラ像もいくつかあったようだが、誰が見ても即座にドラキュラだとわかる見た目にして正解だったと思う。



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