1. CINEMORE(シネモア)
  2. CINEMONOLOGUE
  3. 『マーズ・アタック!』の真剣な悪フザケ【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.52】
『マーズ・アタック!』の真剣な悪フザケ【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.52】

『マーズ・アタック!』の真剣な悪フザケ【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.52】

PAGES


オモチャのような火星人の兵器





 残酷な絵柄のトレカをただ映画化した低俗なパルプSF、だけで終わらないのは、細部へのこだわりがなせるところでもあるだろう。当時の最先端とも言えるCGで描かれた火星人は、CGでありながらあえてストップモーションアニメのようなカクカクした印象の挙動をするし、火星人が身につける宇宙服やレーザー銃も一見オモチャのような安っぽさでありながら、よく見れば使い込まれたような汚れや塗装のハゲまで施されている(地球にやってくるまでにどれだけの星が犠牲になってきたのだろうか)。『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す』に登場したものを元にしているという典型的かつシンプルな円盤も、ずっしりとした金属感があって駆動の仕方などもしっかりしているので、たとえカニの脚のような着陸脚によってちょこんと着地したり、タラップが舌のように伸びたりしても、どこかにメカとしての存在感がある。


 赤いローブをまとった火星人大使、青いローブの火星人リーダーに次いで個性を与えられたキャラクターとして、火星人スパイガールも忘れられない。当時の監督のミューズでもあったリサ・マリーが扮する、人間の女性に変装した火星人の女スパイである。うずまき柄のドレスにあの大きな脳を隠すための巨大なヘアスタイルだけでも印象的だが、リサ・マリーのフィギュア的な造形や謎のゆらゆらした動きも手伝ってミステリアスな雰囲気だ。変装する都合上ヘルメットを装着できない代わりに、地球上での呼吸を可能とするガムを噛み続けており、肩から下げたバッグにはレーザー銃が仕込まれ、指にはカメラ(わかりやすく目玉になっている)がついた指輪がはめられている。


 ホワイトハウスの前をうろついていただけでマーティン・ショートが演じる広報官がまんまと引っ掛かり、連れ込まれる形ですんなり内部に潜入(火星人スパイガールはこの間一言もしゃべらないが全然問題ない)、大統領の寝室にまで入り込んでパジャマ姿の大統領を人質に取るところまでいくのだが、シークレットサービスによって仕留められてしまう。その様子を指輪カメラで見ていた火星人リーダーは激怒し、待機していた艦隊が一気に地球を攻め込んでいよいよ本格的な侵攻が始まるのだった……。途中で口元の化けの皮が剥がれて火星人の歯列が露出してしまうところも、リサ・マリーの端正な顔との対比もあっておもしろいのだが、やがてその顔を脱いで火星人の顔が現れるシーンも好きである。


 世界中を手当たり次第に破壊しながら、火星人は搭乗型のロボット兵器も投入するが、これもトレカの絵柄にあるモチーフ。関節の単純な手足をしたロボットで、ハサミ状の手でトレーラーハウスを掴み上げて破壊してしまう(電車を持ち上げるゴジラだね)。特に意味もなく登場する兵器だが、出撃する際にパイロットの火星人に向かって、別の火星人がランチボックスのようなものを投げ渡すところがちょっと細かくていい。なにからなにまででたらめな火星人のガジェットやギミックだが、見ていて楽しいし、決して適当には作っていないところが素晴らしい。オモチャのような兵器が地球に襲いかかるのも、トレカという媒体から飛び出した作品の性格をよく表しているし、遊び回るように暴れる火星人たちに対して、地球側が必死に抵抗するという図も悲しくも滑稽である。人類(というかアメリカ)にとって切り札だった核ミサイルでさえ、火星人のオモシロ兵器で一蹴されてしまうのだ。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. CINEMONOLOGUE
  3. 『マーズ・アタック!』の真剣な悪フザケ【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.52】