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『マーズ・アタック!』の真剣な悪フザケ【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.52】

『マーズ・アタック!』の真剣な悪フザケ【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.52】

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トレカから飛び出した火星人



 常に自らの趣味が色濃く反映されているティム・バートン監督のフィルモグラフィーの中でも、特に「好き」が詰め込まれてハチャメチャな作品が『マーズ・アタック!』である。特に前置きもなく火星人による地球侵略が始まり、グロテスクで道理の通じないワルガキのような火星人たちが暴れ回る中、アメリカ大統領をはじめ政府中枢、軍隊や科学者、セレブから一般市民まで、人々が翻弄される様を描く痛快なSF作品だ。荒唐無稽な内容ながら、一度見れば忘れられない火星人の強烈なヴィジュアル、随所に溢れるパルプSFや特撮映画への愛など、好きなものを大真面目にまとめあげた一作。そもそも小学生の頃初めて観たときには、とても真剣に見入っていた覚えがある。とにかく観ていておもしろく、楽しい映画だ。


 オープニングからして引き込まれる。おびただしい数の円盤型宇宙船がひと目でそれとわかる火星の赤い大地を飛び立ち、美しいフォーメーションを組んで地球に向かって侵攻していく。ダニー・エルフマンによる「ザ・侵略」と言った感じの威圧的なメイン・テーマをバックに飛んでいく円盤の艦隊がかっこいい。一糸乱れぬ円盤の編隊を俯瞰から映した様子は、どこかゲームの「スペース・インベーダー」を思わせる絵でもある。


 アメリカはケンタッキー州では燃えながら走る牛の群れと、直後に飛び去る円盤が目撃される。牛と円盤とは切っても切れない関係で、エイリアンは牧場の牛にちょっかいを出したりさらったりするものと相場が決まっており、それを愚直なまでに映像化した冒頭場面である(またケンタッキー州ではあのロズウェル事件の半年後に未確認飛行物体の目撃事件「マンテル大尉事件」も起きている)。ハッブル宇宙望遠鏡も円盤の艦隊を確認し、地球側は火星人の存在とその接近を知る。電波ジャックされたテレビでは火星人のメッセージが流れ、近く火星の大使が地球を訪れることに。不安と好奇心が半々の火星人フィーバーが起こる中、ネバダ州の砂漠地帯に設営されたセレモニー会場に軍隊や観衆が集結。やがて空から円盤が降りてきて、ついに火星人が現れる。異星文明とのファーストコンタクトを、世界中の人々が見守るが……。


 好きなところはたくさんあるが、なんといっても火星人の造形である。剥き出しになるほど巨大な脳、眼球の入った骸骨のような顔。言語とは思えない雑音のような言葉。さらに彼らが身を包む宇宙服もいい具合で、その特徴的な頭部に合わせた電球のように膨らんだヘルメットがおもしろい。あまりにも奇怪なこの火星人、てっきりバートンによるデザインのように感じられもするが、そもそもこの映画は1962年にトレーディングカード会社トップスから発売された同名のトレカシリーズを原案としており、火星人の造形もトレカのアートワークを元にしている。火星人が地球でひたすら暴虐の限りを尽くす様子が描かれるのだが、パルプな感じの絵がまたいい。トレカを見ていくと、なるほどこの世界観をストレートに映画化しているのかと合点がいくし、バートンの映像世界との親和性が高いこともよくわかる。




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