メジャー映画にインディペンデント精神を持ち込め! 映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜 イベントレポート Vol.1(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.19】
メジャーにインディペンデント精神を持ち込め!
香田:行定さんはいかがでしょう。
行定:僕らがデビューした20年くらい前は、東宝、松竹、東映、大映、日活の5社で撮られる作品がメジャー映画と呼ばれていました。配給網がしっかりしていて、自分たちで劇場まで持っている映画会社の作品ですね。先ほど内田くんが言ったように、たくさん劇場を持っているところが有利というのは確かです。
そういう状況の中、僕はどちらかというとインディペンデント出身で、助監督をやっているときからインディーズでやっている監督たち、当時だと山本政志さん、林海象さん、石井聰亙さんに憧れて、彼らの下でとにかく這いつくばっていた。ただ映画が好きなだけで、お金とかそういう話じゃなかった。
こう言ってしまってはいけないのですが、インディペンデントだと無限に時間を使える。大きく組織化していくと時間は有限になるのですがインディペンデントでは無限なんです。今で言うとブラックですが、それはつまり寝ないということで、それでも面白いものが低予算で作られていました。
メジャーとインディペンデントの違いとして僕が常に思うことは、インディペンデントは低予算だからこそ、冒険ができるんです。メジャーでは冒険が出来ない。なぜならお金がかかっていて、それを回収しないといけないから。もちろん映画はどんな大きさでもお金を回収しなきゃいけないと思っています、そうでないと撮り続けていけない。そこで一番回収しやすいのは何かというと、低予算ですごく面白い映画をつくることなんです。
日本は良くも悪くも国内で観客をシェア出来てしまった。例えば香港とか台湾とかでは国内では観客をシェア出来ないから、海外に向けていくしか無いんですよね。その分世界に広がることができた。だけど日本の場合は国内でシェアできるから回収出来る目標というのが立てやすいんです。だからすごくドメスティックになっちゃって、海外に出ていかない。だから冒険をしない方向にいく、冒険をしないで確実なところを狙うのがメジャー映画だと僕は位置づけていますね。
一方でインディペンデントは冒険できる、だから僕は両方やるんです。冒険したいときも絶対あるし、そうしないと精神的バランスがとれない。メジャーにインディペンデント精神を持ち込めれば、必ず面白くなると信じて20何年やってきました。
バーターとか言われても、僕はやりたくないと言って、これまでそれでやってきた。それが出来ないなら辞めますと最初に条件を出していたんです。だから僕は、本広さんに比べると苦労してないと思います。
原作モノのときでも、「原作を変えていいならやります。いいシーンが浮かんでいるからラストシーンを変えます。」その条件を原作者さんがOKを出してくれるなら受けていました。別にケンカしたいわけでは無いんです。原作者さんは0から1にした神ですから、そこに逆らうつもりはないけれども、映画的に変えられるのだったらそっちの方がいいよねと、それを最初に条件としてやってきました。
結局、自分としてはインディペンデントとメジャーにあまり境はないのですが、それも自分は幸運だったのかなと、本広さんの話を聞いて思いましたね。