メジャー映画にインディペンデント精神を持ち込め! 映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜 イベントレポート Vol.1(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.19】
誰もやっていないことをやる
香田:行定さんは、メジャーでインディペンデントらしく作ろうと、布石を打った上で望んでいるということなのでしょうか。
行定:そうですね、接点を見つけているのかもしれないです。だから、メジャーとインディペンデントの違いというのが実はよく分からないんです。自分が面白いと思うもので成立するのであれば、どちらでもやりがいはある。
例えば僕が、吉永小百合さん主演の『北の零年』(05)というメジャー映画を撮ったとき、真っ先に思ったのは、吉永さんと同じ画面に阿部サダヲがいることだったんです。最初の段階から、阿部サダヲをこの役でキャスティング出来るのかと言い続けていました。当時阿部サダヲくんは大人計画という劇団の人気俳優だったのですが、吉永小百合さんと阿部サダヲが共演している画ってまだ誰もやっていないから、やれたら面白いなと。そういうワクワクする冒険ってあるんですよね。
その作品では普段より潤沢に予算はあったから、4ヶ月撮影させてもらいました。毎日撮影するからとんでもないフィルムが回って、プロデューサーに物凄く怒られましたね。自分が若かったこともあり、今だったら怖くて出来ないようなことを、一回きりだろうと思って色々やっていました。やったことがないことをやりたかったんですね。
香田:確かに当時はフィルムですもんね。行定さんでもプロデューサーに怒られるのですね。
行定:怒られますね、もういい加減にしろと。『GO』(01)を撮った時も怒られました。その時は撮影全体で想定していたフィルム量を、たった3日間で全部使いきってしまった。カメラマンの柳島さんが「俺が一緒に怒られるから」って言ってくれて、一緒に怒られました(笑)。
本広:現像所にいくと、「○○組は何万フィート回しています」と、フィルムを使いすぎないように釘を刺されるのですが、いつも行定さんの名前が出てきましたね。「岩井組と行定組は何万フィート回しているけど、本広組は大丈夫だよね?」って必ず言われる(笑)。フィルムの頃はそんな感じでシビアでした。