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メジャー映画にインディペンデント精神を持ち込め!  映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜 イベントレポート Vol.1(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.19】

メジャー映画にインディペンデント精神を持ち込め! 映画はこうして作られる! 〜メジャー映画と作家性〜 イベントレポート Vol.1(全3回)【CINEMORE ACADEMY Vol.19】

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メジャーとインディペンデントのハイブリッド



内田:行定さんや本広さんはすごく大きな作品をやっているイメージがありますが、中身はゴリゴリのインディーズ男子ですよね。意外と珍しいんじゃないかなと思ってます。皆、ハイブリッドを目指していると思うんですよ。海外には作家性もあるし予算もそこそこあるというハイブリッドがいっぱいある。今回はそれをやろうとしている4人が珍しく揃ったなと思いました。


日本では、間をやろうという発想が何故かあんまりないんですよね。メジャーは原作が漫画かベストヒット小説、インディペンデントは自主映画で1000万円以内、という具合にはっきりと区分けされている。だけど3億の予算があるインディーズ映画があってもいいわけじゃないですか。実際、海外にはいっぱいあるし、何なら海外じゃ3億なんてインディペンデントだという話になっちゃう。


今までの日本映画の歴史の中でも、3億で好き勝手やって個性的な映画が撮られたこともあったけど、それは全て尖りすぎていて、興行的にはコケてしまっていた。そうではなくて、ちゃんとお客さんも入る作品を目指すべきだし、それこそ行定さんが20何年やってこられたことだと思います。僕や藤井さんは、これまで200万円とか300万円で映画を撮っていたので、同じ内容で3億あればいいなと。そういったハイブリッドをやりたい4人が今日集まったのかなと思っています。


香田:以前藤井さんは、A24で映画を撮りたいとおっしゃっていましたが、自由にやらせてくれて、かつ予算もちゃんとあるA24は理想なんでしょうね。


藤井:そうですね。すごく面白い作品を作っている同世代の監督たちが世界には沢山いて、それが海を超えて僕たちのところに届く。海外の作家たちへのライバル心もあって、意識はしていますね。


先ほど行定さんがおっしゃったことで、その通りだと思うのが、日本映画はすごくドメスティックだということ。日本では国内でどう回収するかをまず考えていて、どうすれば自分の作品を海外の人たちに観てもらえるかは、よく知らないという監督も多い。その辺は日々勉強会等をしていくことで変えていきたいですし、僕自身も外に出たいという気持ちが強くあります。


SYO:国内の作品と海外の作品を分けて観てしまう文化が観客の中にありますよね。ライターとしては、いかに接点を見つけてもらい観ていただくかを苦心するのですが、そういった分断は、観客だけではなく、作り手にもあるんだということを藤井さんの話を聞いて感じました。



Vol.2へ続く



【ゲストプロフィール】50音順/敬称略




映画監督:内田英治

ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。週刊プレイボーイ記者を経て99年「教習所物語」(TBS)で脚本家デビュー。14年「グレイトフルデッド」はゆうばり国際ファンタスティック映画祭、ブリュッセル・ファンタスティック映画祭(ベルギー)など多くの主要映画祭で評価され、つづく16年「下衆の愛」はテアトル新宿でスマッシュヒットを記録。東京国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭(オランダ)をはじめ、世界30以上の映画祭にて上映。イギリス、ドイツ、香港、シンガポールなどで配給もされた。近年はNETFLIX「全裸監督」の脚本・監督を手がけた。最新作『ミッドナイトスワン』は日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。





映画監督:藤井道人(ふじい・みちひと)

1986 年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010 年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(2014年)でデビュー。 以降『青の帰り道』(18年)、『デイアンドナイト』(19年)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、など精力的に作品を発表しており、今後も待機作を多く控える。2019年に公開された映画『新聞記者』では、第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞含む6部門受賞、他にも映画賞を多数受賞。今最も注目されている映像作家の1人である。





映画監督・演出家:本広克行

1965年生まれ。香川県出身。1996年に初の映画監督作品『7月7日、晴れ』で劇場デビュー。2003年に公開された映画『踊る大捜査線 THEMOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!』では、日本映画(実写)興行収入記録歴代一位の座を獲得。2015年公開の映画『幕が上がる』(平田オリザ原作・ももいろクローバーZ 主演)では、舞台版の演出も担当。舞台最近作は「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス VirtueandVice」他。HTB開局50周年ドラマ『チャンネルはそのまま!』では2019年日本民間放送連盟賞のテレビ部門で“グランプリ“を受賞。最近作は映画『亜人』(2017年)、『ビューティフルドリーマー』(2020年)『ブレイブ‐群青戦記‐』(2021年)など。





映画監督:行定勲

1968年生まれ・熊本県出身。2000年長編映画初監督作品『ひまわり』で釜山国際映画祭国際批評家連盟賞受賞、2001年『GO』で第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ数々の賞に輝き、一躍脚光を浴びる。2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』を公開、興行収入85億円の大ヒットを記録し社会現象となった。以降、『北の零年』(05)、『春の雪』(05)、『クローズド・ノート』(07)、『今度は愛妻家』(10)、『パレード』(10/第60回ベルリン国際映画祭パノラマ部門・国際批評家連盟賞受賞)、『円卓』(14)、日中合同作品『真夜中の五分前』(14)、『ピンクとグレー』(16)、故郷熊本を舞台に撮影した『うつくしいひと』(16)、日活ロマンポルノリブート『ジムノペティに乱れる』(16)、『うつくしいひと、サバ?』(17)、『ナラタージュ』(17)など。2018年『リバーズ・エッジ』が第68回ベルリン国際映画祭パノラマ部門オープニング作品として公開され、同映画祭にて国際批評家連盟賞を受賞。昨年は、『劇場』(20)と『窮鼠はチーズの夢を見る』(20)が公開。また映画だけでなく、舞台「趣味の部屋」(13、15)、「ブエノスアイレス午前零時」(14)、「タンゴ・冬の終わりに」(15)などの舞台演出も手掛け、その功績が認められ2016年毎日芸術賞 演劇部門寄託賞の第18回千田是也賞を受賞。今後は、パルコ・プロデュースの舞台「リボルバー〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜」の演出(7/10-8/1 PARCO劇場、8/6-8/15 東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール)など。


【MCプロフィール】敬称略




映画ライター:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema



CINEMORE編集長:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



取材・文:山下鎮寛

1990年生まれ。映画イベントに出没するメモ魔です。本業ではIT企業を経営しています。



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