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『“それ”がいる森』中田秀夫監督 Jホラーのくびきを乗り越えるため「動の演出」で新作に挑む【Director’s Interview Vol.244】

『“それ”がいる森』中田秀夫監督 Jホラーのくびきを乗り越えるため「動の演出」で新作に挑む【Director’s Interview Vol.244】

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Jホラーをアップデートする挑戦



Q:本作の恐怖表現は今までの中田作品とは違ったものだと思います。そのあたりはかなり意識されたのでしょうか?


中田:今までのJホラーの在り様は考えないといけないと思っていました。伝統的なJホラーは幽霊がぼやけた形で表現されることが多い。僕の『女優霊』(96)や『リング』(98)もそうですが、テレビの画面にぼんやりと映っていたり、あるいはフォーカスがぼけて顔がはっきり見えない。そして、ただ立っているだけで襲ってこない。


例えば、アメリカのサム・ライミが80年代に撮ったような『死霊のはらわた』(81)のように、ゾンビが人を食いまくって、といった能動的な動きはしない。Jホラーは予算がないから、それができない面もあったんですが、とにかく顔が見えない幽霊が部屋の隅の暗がりにいて、ただ立っている。「それが怖いんだよ」っていうのを植えつけたのがJホラーだったと思うんです。


今だに僕と同世代のJホラーファンの人たちは、そのイメージがどうしてもあると思います。その表現をとことん追求することも、それはそれで大事なことなのかもしれない。でも90年代のJホラーブームの後に生まれた子たちが、もう中学生や高校生になっているので、それだけじゃまずいよね、と思うようになってきたんです。『貞子』(19)はJホラー的に撮ったんですが、『事故物件 恐い間取り』の時には明確に今までのJホラーの方法論は違うと思っていました。



『“それ”がいる森』©2022「“それ”がいる森」製作委員会 


そう考えたときに、日本人もハロウィンで仮装したりして、ホラーをエンタメとして捉えるようになっているなと思い至りました。要するに息を潜めて映画館で体を硬くして怖がっているだけではなくて、自分たちが「貞子」や、「俊雄」の扮装をして街を練り歩いて楽しんでいる。だから、もっと能動的な表現で、真面目一辺倒のホラーではないものが良いのではないかと。それはアメリカ的なものなのかも知れません。


僕は2004年にアメリカに渡り『ザ・リング2』(05)を撮りましたが、その時に劇場でカルチャーショック受けたことがありました。公開直後、ロサンゼルスのアークライトという大きな劇場に観にいったんです。すると一番前の席で中学生くらいの女の子たちが映画を観ながら冗談を言ってゲラゲラ笑っている。そうやって映画を楽しむ文化が、アメリカには普通にあるんだと。


Q:アメリカでは映画館で観客が「そんなわけ、ないだろ!」とか画面に突っ込んだりすることが普通にあるそうですね。


中田:そうなんです。ヒッチコックの映画を見ながら大爆笑していたりする。どうしてだろうって思うんだけど、そういう文化なんですよね。怖いけど、怖さをリリースするために隣の人と笑いあったりする。日本人はそこまでいかなくても、ハロウインを楽しむようになって、ちょっとアメリカナイズされてきているなと感じていました。そういうことを、ここ5年くらい感じていたので、そっちの方向に舵を切るべきだというのは、『事故物件 恐い間取り』の時にはっきり思っていました。





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