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『ザ・メニュー』マーク・マイロッド監督 ロバート・アルトマンから得たインスピレーション【Director’s Interview Vol.260】

©2022 20th Century Studios. All rights reserved.

『ザ・メニュー』マーク・マイロッド監督 ロバート・アルトマンから得たインスピレーション【Director’s Interview Vol.260】

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予約困難な超高級レストラン、選び抜かれた12名の客たちが払った料金は一人20万円。彼らに振る舞われるコース料理に隠された秘密とは…。本作『ザ・メニュー』は製作をアダム・マッケイが手掛けただけあって、一筋縄ではいかない展開が待っている。監督のマーク・マイロッドに話を伺うと、ロバート・アルトマン監督の映画『ゴスフォード・パーク』(01)を参考にしたとのこと。群像劇と風刺の名手ロバート・アルトマンから影響を受けたものは何だったのか?マイロッド監督の話はとても興味深いものだった。



『ザ・メニュー』あらすじ

太平洋岸の孤島を訪れたカップル、マーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)とタイラー(ニコラス・ホルト)。お目当ては、なかなか予約の取れない有名シェフ・スローヴィク(レイフ・ファインズ)が振る舞う、極上のメニューの数々。 「ちょっと感動しちゃって」と、目にも舌にも麗しい、料理の数々に涙するカップルの男性に対し、女性が感じたふとした違和感をきっかけにレストランは徐々に不穏な雰囲気に。 なんと、一つ一つのメニューには想定外の“サプライズ”が添えられていた… 。果たして、レストランには、そして極上のコースメニューにはどんな秘密が隠されているのか?そしてミステリアスな超有名シェフの正体とは…?


Index


『ゴスフォード・パーク』と『皆殺しの天使』



Q:優れた密室劇であり、群像劇の要素も持ったサスペンスフルな作品に仕上がっていました。劇中の多くがレストランだけで展開されることは、チャレンジだったのではないでしょうか。 


マイロッド:一つの空間で撮り続けるのは飽きられないか不安でしたが、『パラサイト 半地下の家族』(19)や『ミザリー』(90)、『皆殺しの天使』(62)のように、同じ空間にいるからこそ作り出せる緊張感もある。空間設計も色々工夫をして、夕日が見えるような仕掛けや、料理人の動きが見える厨房の配置など、空間にダイナミズムを持ち込みました。大きなチャレンジでしたね。


今回目指したトーンは3つあって、スリラーとコメディ、そして最後の一つが風刺です。緊張感とコメディはすごく相性がいい。緊張感があるからこそコメディが生まれる。キャラクターへのプレッシャーの波を作ることができるんです。



『ザ・メニュー』©2022 20th Century Studios. All rights reserved.


Q:ロバート・アルトマンの『ゴスフォード・パーク』を参考にしたと聞き納得しました。具体的に何が参考になりましたか。


マイロッド:大きく二つのインスピレーションを受けました。一つはテーマで、持てる者と持たざる者の階級差別に関すること。もう一つは役者との仕事の仕方です。『ゴスフォード・パーク』に出演した役者と以前に仕事をしたことがあって、その時にロバート・アルトマン監督の現場について質問攻めにしました(笑)。


アルトマン監督は出演者全員にマイクをつけて撮影をしているんです。録音技師も二人用意して、一人が脚本に書かれているメインのセリフをしっかり録り、もう一人はその他背景の話を録音する。つまり、その場にいる全員の言葉を収録しているんです。また、出番のない役者も毎日現場に来て撮影に立ち会ってもらい、皆の一体感を作り出していく。まさに群像劇に合った撮影ですよね。アドリブがしやすい環境になることにより、役者たちは皆キャラクターを掘り下げることが出来る。クリエイティブの自由を生み出す素晴らしい方法だと思います。


Q:『ゴスフォード・パーク』の他にも影響を受けた作品などはありましたか。


マイロッド:他に影響が大きかったのはルイス・ブニュエルの『皆殺しの天使』ですね。本作『ザ・メニュー』ではコース料理を通して、客自身が社会の不均衡に加担していると気付く。最初は排他的で特権階級気分の客たちは、シェフのスローヴィクに誘われるがまま、自分たちの罪を認めるところまで連れていかれる。あの空間は社会の縮図なんです。そういう物語を組み立てるのに『皆殺しの天使』はとても役立ちましたね。





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