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『MEN 同じ顔の男たち』アレックス・ガーランド監督 映画作りで一番重要なことはクリエイティブな自由【Director’s Interview Vol.269】

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『MEN 同じ顔の男たち』アレックス・ガーランド監督 映画作りで一番重要なことはクリエイティブな自由【Director’s Interview Vol.269】

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キャラクターをカリカチュアにしない



Q:ロリー・キニア演じる街の男たちは生理的な気味の悪さがありますが、もっと恐ろしいのは彼らにも人間的な側面が垣間見られること。ついそこに油断しそうになる“さじ加減”が絶妙でした。キャラクターについてロリーとはどんなことを話しましたか?


ガーランド:ロリーとはたくさん話をしました。ロリーが提案してくれて一番大きかったことは、全てのキャラクターに人間性を吹き込んだことです。今回ロリーは多様な人物を演じていいますが、劇中での露出具合はそれぞれ異なります。例えば、バーの奥でただ座っているだけのキャラクターまでにも、その人物のバイオグラフィをロリーが独自に作り上げていました。誕生日からそれまでの人生、家での生活など、事細かにキャラクター設定をしてくれたんです。


重要だったのは決してカリカチュアにならないこと。立体的で色んな側面があり、まるで隣で息をしているようなキャラクターにすることが必要。ロリーはそれが出来る役者なんです。彼は本当に洗練されていて、ユーモアと深みを持って色んな役にチャレンジできる。だからこそ彼をキャスティングしたんです。



『MEN 同じ顔の男たち』© 2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


Q:ホラーというエンターテインメントの中にジェンダー問題を軸として立てていますが、映画で社会問題を提起する手法の意義について考えがあれば教えてください。


ガーランド:僕は20代の頃は小説家でした。小説と映画という二つのメディアで仕事をしてきましたが、映画を通して物事を伝えることに意義を感じるんです。それは映画が大好きだから。そこが一番大きいと思います。映画は色んな人がコラボレーションし、まるでオーケストラのように一緒に作り上げているものなのに、映画館で観ている時はそれらは全く感じず、スクリーンに映るものが全て。そんなところも面白いし素晴らしい。映画は観るのも作るのも大好きだから、社会問題のディスカッションも映画を通してやっていきたいんです。


Q:影響を受けた監督や映画作品を教えてください。


ガーランド:たくさんの映画や監督たちから影響を受けましたが、特に70年代の影響が大きいですね。当時はすごく面白いことが起きていた。多くのフィルムメイカーたちが映画の文法をしっかりと理解しつつ、興行のことを全く気にせずに新しくエッジの効いた作品に挑んでいた。そんな時代だからこそ『地獄の黙示録』(79)、『タクシードライバー』(76)、『ゴッドファーザー』(72)、『パララックス・ビュー』(74)などなど、挙げていくとキリがないくらい、多くの傑作が生まれた。


その後、欧米の映画は成功して大ヒットを多く生み出してしまったが故に、その自らの成功によって犠牲になってしまったものも大きいと思います。例えば『エクソシスト』(73)が、もし今の時代にリリースされていたらアートハウス扱いされると思うんです。そう考えると、当時と今でいかに業界が変わったのかが分かりますよね。



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監督・脚本:アレックス・ガーランド

1970年5月26日生まれ、イングランド・ロンドン出身。小説家としてキャリアをスタートし、「ザ・ビーチ」や「The Tesseract」などの作品で知られる。その後、脚本家に転身し、ダニー・ボイル監督の『28日後...』(02)でデビュー。その続編である『28週後...』(07)では製作総指揮も務めた。2015年、監督デビュー作『エクス・マキナ』(14)で、アカデミー賞オリジナル脚本賞のほか、英国アカデミー賞優秀英国映画賞、および優秀英国新人賞にノミネートされた。2018年に監督・脚本を務めた2作目『アナイアレイション ‒全滅領域‒』を発表。2020年には単独で脚本と監督を務める8部構成のオリジナルTVシリーズ「Devs」がFX Networksで放送された。そのほか、脚本を執筆した作品には、『サンシャイン2057』(07)、『わたしを離さないで』(10)、『ジャッジ・ドレッド』(12)、ビデオゲーム「Enslaved: Odyssey to the West」(10)などがある。現在は、本作と同じくA24でオリジナル脚本の近未来のアメリカを舞台にしたアクション長編『Civil War(原題)』を監督中。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『MEN 同じ顔の男たち』

12月9日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

配給:ハピネットファントム・スタジオ

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